大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2012年センター試験の分析

センター試験「平成24年度試験問題評価委員会報告書(本試験)」より~その1~

 今年度のセンター試験の講評がでました。その中の「高等学校教科担当教員の意見・評価」(以下,高校教員)と「問題作成部会の見解」(以下,作成部会)から気になる点をまとめます。センター試験攻略の参考にしてください。

 「問題作成部会の見解」から「2各設問の出題意図と解答結果」の中から気になったものをピックアップします。なお,設問の正答率については具体的な数値が出ておりませんが,「標準的」とある場合は正答率60%台と推測できます。それを基準に「やや低い」だと50%台,「やや高い」だと70%台ぐらいが正答率と推測できます。90~100点をめざす受験生にとっては「標準的」以下の正答率の設問が「差が付く問題」と考えてもらえばいいでしょう。

第2問 問2(問題番号9)
 奈良時代の戸籍や民衆生活に関する問題。正答率はやや低め。
 作成部会には特に気になる指摘はありませんでしたが,高校教員の「(解答となる④の選択肢について)木綿の国産化の時期(室町時代後期)についての知識がなくても,日朝貿易における日本の輸入品が木綿であったことを考えれば,正答を導くことができた」という指摘はもっともです。ただ,作成部会は「誤った者は,生活史に関する理解不足が原因と思われる」としており,近世以降に木綿が民衆の衣料の素材となったことへの理解をもとめたのでしょう。これは「時代をまたぐ判断」を必要とする問題です。選択肢の正誤判断には,設問に関連する時代だけを考えていてはダメだということです。

第2問 問3(問題番号9) 
 史料『万葉集』(「貧窮問答歌」)より,律令制下の民衆の生活と実態に関する問題。正答率はやや低め。
 作成部会は「『万葉集』の中の「五十良(さとおさ)」が律令制の「里長」であることを正しく認識できれば,知識がなくとも解答にたどり着けるように作問したつもり」であったが,「教科書にもよく取り上げられている基本的な史料に対する知識も不足」が低い正答率の原因としています。これに対して,高校教員は「昨年度の「墾田永年私財法」同様,受験者になじみの深い史料を扱っていることを高く評価するとともに,今後もこの方向性を踏襲していくことを強くお願いする」としています。
 以上から,多くの教科書に掲載されている基礎史料の出題は続くと思われます。ただ,作成部会に「基本的な史料に対する知識」の不足が指摘されているように,教科書の史料は「その場で読む=初見史料の読解」ではなく,「読んだことがある,知っている史料」として出題される可能性が高いので,普段から教科書史料の確認をしておきたいところです。

 その2へつづく

2012年 センター日本史B 本試験 設問分析~その7~

 今回は現代史の問題です。

◆第6問 問6 問題番号34 ◎占領政策とその転換

問6 下線部eに関連して,占領期の公職追放とその解除について述べた文として正しいものを,次の①~④のう
 ちから一つ選べ。

  ① GHQは,保安条例を発令して軍国主義的な教員を追放させた。
  ② 朝鮮戦争に参戦するため,追放を解除された旧軍人らを中心に保安隊が新設された。
   ③ GHQは,日本共産党幹部の公職追放を指示したが,朝鮮戦争が始めると国内安定のために解除した。
 ★④ 1950年代には,追放を解除された政治家を首班とする内閣が生まれた。

 半分ぐらいの受験生しかできなかったと思われる問題です。誤答は③と①が多かったようです。①を選んだ受験生は保安条例を知らなかったのでしょうか。自由民権運動のなかで出された弾圧法令の一つで,大きく時代がズレています。③は第二次世界大戦前からの「日本共産党の弾圧→政治犯釈放→レッドパージ」という展開と朝鮮戦争との関係がわかっていなかったのでしょうか。ある意味,この問題は太平洋戦争前から戦後の展開を理解しておく必要のある問題です。④は鳩山一郎を想起できればいいでしょう。
 

◆第6問 問8 問題番号36 ◎戦後の疑獄事件と内閣

問8 下線部bに関連して,第二次世界大戦後の疑獄事件に関して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年
 代順に正しく配列したものを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。

Ⅰ 米航空機の売り込みをめぐる収賄疑惑により,前首相が逮捕された。
Ⅱ 昭和電工事件が発覚して,片山哲内閣から2代続いた3党連立内閣が倒れた。
Ⅲ 造船疑獄事件をめぐって首相への批判が高まり,戦後初の長期政権が崩壊した。

  ① Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ     ② Ⅰ-Ⅲ-Ⅱ     ③ Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ
★④ Ⅱ-Ⅲ-Ⅰ     ⑤ Ⅲ-Ⅰ-Ⅱ     ⑥ Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ

 解答は④ですが,誤答はいろいろありました。現代史を学習していれば簡単だったのではないでしょうか。Ⅰはロッキード事件で,「前首相」は田中角栄です。Ⅱは昭和電工事件に片山哲と内閣名も出ています。Ⅲは造船疑獄事件は知らなかったとしても,「戦後初の長期政権」で吉田茂内閣(第2次~5次)とわかればできるでしょう。
 いずれも基本事項ですが正答率は低めに出ていたようです。

 実は,参照していませんが,問題番号35の「55年体制下の政治」についても正答率はそんなに高くなかったのです。
 ここから推測するに現代史を「学習した受験生」と「学習していない受験生」の差がでたのではないでしょうか。選択肢に出ている事項はすべて教科書にある基本的な事項です。問題が難しくてできなかったとは考えにくいところです。つまり,現代史は学習さえすればできるような問題が多いと言えます。現代史まで学習が届かない受験生(特に現役の高校生)は意外に多いのではないでしょうか。
 今年度の現代史問題は4問で配点は合計11点です。落とすと痛いですね。センター試験における現代史整理のポイントを整理しておきます。

〈現代史整理のポイント〉
1.1993年=55年体制崩壊まで学習しておくこと。
2.整理の際に,占領期,1950年代,1960年代,1970年代,1980年代,1990年代に分けて,各時期の特徴を大づかみすること。
3.2を意識しながら,内閣ごとの主要な出来事が列挙できること。
 この3点を意識しながら,現代史は整理してください。センターの出題に即した整理になります。

 以上,今回で2012年度のセンター日本史Bの分析を終えたいと思います。
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