今回で今年度の設問分析は最後になります。第5・6問,近現代史についての分析です。今年度は昨年度と違い,現代史の出題が簡単だったようです。
 今年は人物史で手塚治虫がテーマになっており,「おっ!」と思ったのですが,問題を最後まで解いてがっかりしました。手塚治虫についての設問が無かったからです。1問でも答「鉄腕アトム」のような問題が欲しかったです。漫画を,手塚治虫を「日本文化史」として扱うなら,出題するべきだったのではないでしょうか。


【第5問 問4 問題番号28】 表から考える問題

問4 下線部cに関連して,主要な租税収入の推移を示した次の表に関して述べた下の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。[表省略]

  X 租税収入に占める酒税の比率が,初めて地租を超えたのは,日露戦後のことである。
  Y 関税自主権の完全回復まで,租税収入に占める関税の比率は,10%を超えなかった。

  (1)X 正  Y 正 (2)X 正  Y 誤 (3)X 誤  Y 正 (4)X 誤  Y 誤

 ここ数年は,第5問で表・グラフの問題が必ず出題されています。この問題は時期の判断が全てです。Xは日露戦争が1904年である,または1900年代前半であることがわからないといけません。西暦年で判断する問題に対しては批判的ではありますが,日露戦争ぐらいはいいだろうと思います。後は表から1900年と1905年を比較すれば,誤りだと判断できます。Yは,関税自主権の完全回復がポイントですが,関税自主権の完全回復は,小村寿太郎外相(第2次桂内閣)の「1911年」です。しかし,表の数値から関税自主権の回復が「日露戦争後」であることさえわかれば,西暦年を知らなくても解けるようになっています。センター試験では,西暦年を考えるよりも,大雑把な「時期区分」がわかるほうがよいということです。Yの選択肢は,「関税自主権の完全回復」だけで時期の判断をしなければいけないという意味では難問だったといえますが,ただ,問題番号26Yで陸奥宗光が問われているうえに,昨年度も日英通商航海条約は第5問で問われています。過去問を解いた際に周辺知識の確認もしておけば簡単な問題ではなかったでしょうか


【第6問 問1 問題番号29】 リード文・下線部から時期を判断する正誤問題

問1 下線部aに関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 電話交換手やバス車掌などとして働く女性が増加し,彼女らは職業婦人とよばれた。
  Y 一部の農村では,娘の身売りや欠食児童が続出した。

 (1)X 正  Y 正 (2)X 正  Y 誤 (3)X 誤  Y 正 (4)X 誤  Y 誤

 この問題も,(2)(3)に誤答がわかれましたが,(3)のほうがやや多かったでしょうか。この問題は下線部aの前後の記述から時期を判断しないといけません。下線部は「都市を中心に大衆文化が広がる…」とあり,正確な時期はつかめません。その前に「手塚の幼少期は」とあります。Aの文章は「手塚治虫は1928年に生まれ…」とはじまります。ということは,「手塚の幼少期」は1930年代前半と推測でき,満州事変が始まったころだとわかります。そうすれば,Xは大正から昭和初期の大衆文化,Yは昭和恐慌の記述なので,両方とも正しいと判断できます。リード文から時期を考えさせる問題は,2010年,本試験,第3問の問2(法然が活躍した時期の出来事)でも出題されていますが,正答率は非常に低い問題でした。リード文をよく読まないといけないということです
■2007年・本試験・問題番号29・30で,大衆文化としてデパート,洋食(カレーライス)などの関連問題。
■2013年・本試験・問題番号32に欠食児童・娘の身売りの出題。


【第6問 問2 問題番号30】 内閣による時期の判断が必要な正誤問題

 問2 下線部bに関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  a この内閣は,治安維持法を改正して,最高刑を死刑とした。
  b この内閣は,社会運動を取り締まるため,全国に警察予備隊を設置した。
  c この選挙では,無産政党が議席を獲得した。
  d この選挙では,20歳以上の男子に選挙権が付与されていた。

  (1) a・c  (2) a・d  (3) b・c  (4) b・d

 この問題の誤答は(2)にやや偏っていました。まず,「この内閣」「この選挙」が下線部より,田中義一内閣だとわからなければいけません。下線部bに「普通選挙制に最初の普通選挙を実施」とあるので,問題ないでしょう。abについては,昨年度から増えた近代の問題に現代の語句を入れることで誤文を作るパターンで,「警察予備隊」が太平洋戦後の語句であることは判断できるでしょう。しかし,cdについては,dが基本的な誤りであるにもかかわらず,正しいと判断した受験生が一定数いたということです。選挙資格が20歳以上になるのは太平洋戦後のことです。選挙制度の変遷については頻出事項にもかかわらず,整理できていない受験生は意外に多いので,注意が必要です。また,この問題のbの選択肢は近代と現代をまたぐパターンの問題です。
■2000年以降,大日本産業報国会も総評も本試験で出題なし。日本史Aでは出題されている。


【第6問 問5 問題番号33】 戦後の語句を利用した近代正誤

 問5 下線部e関連して,満州事変以後の軍需産業と経済について述べた文として誤っているものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

   (1) 軍部と結びついた新興財閥は,朝鮮・満州へ活発な投資を行った。
   (2) 物資動員計画を立案する企画院が設立された。
   (3) 労働組合は解散させられ,日本労働組合総評議会が結成された。
   (4) 日本軍が南部仏印に進駐すると,アメリカは対日石油輸出を禁止した。

 この問題は誤答がきれいに分散していました。誤文を選ぶ問題は比較的正答率が高い区出るのですが,この問題はそうではありませんでした。(3)の日本労働組合総評議会を知らなかった受験生が多く,正誤の判断ができなかったのでしょう。正誤の判断をするためには知っていることが必要です。日本労働組合総評議会(総評)は1950年に結成した労働組合の全国組織です。1956年から春闘の指導をした組織で教科書の頻度は高いです。知っていた受験生はあっさり解答できたことでしょう。これも,近代と現代をまたぐ問題のパターンで,現代史の問題は選択肢単位でみれば,設問数以上に多いことがわかるでしょう。労働運動は近年頻出ですが,正答率が低い問題が多いのでしっかり整理しておく必要があります。

 以上,今年度の分析を終わります。受験生のみなさんは参考にしてください。