前回の続きです。今回は第3問・第4問,中世・近世の問題です。今年は中世の問題の正答率が非常に低く,難問が多かったようです。

【第3問 問1 問題番号13】 時期の判断を必要とする文章正誤問題

 問1 下線部aに関連して,源平の争乱について述べた文として正しいものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  (1) 崇徳上皇と白河上皇の政権をめぐる抗争は,武士の政界進出の契機となった。
  (2) 源平の争乱が終結したのち,院政を再開した後鳥羽上皇は鎌倉幕府との協力関係を重視した。
  (3) 源平の争乱を描いた『太平記』は琵琶法師によって語られ,人々に親しまれた。
  (4) 源頼朝は,平氏が西国へ敗走したのち,後白河法皇と交渉し,東国支配の権限を認められた。

 誤答は分散していましたが,(1)の誤答が比較的多かったようです。(1)は1156年の保元の乱を説明した文章だとわかれば,崇徳上皇と「後白河上皇」の政権をめぐる抗争なので誤りなのですが,白河上皇と後白河上皇があいまいだったのでしょうか,それとも,見落としでしょうか?ちょっとセンター試験の出題の仕方がズルいとは思います。いずれにせよ,受験生が覚えにくいと考えているところで,平安中期からの武士の争乱と関係者はしっかり覚えておきたいところ。あいまいな知識ではダメだということです。意外だったのが,(3)の誤答もそれなりにあったことですが,『平家物語』と『太平記』の違いは受験勉強のレベルなのでしょうか?そのレベルの基礎知識がない受験生がいるということなのでしょう。


【第3問 問2 問題番号14】 文化史人物(時期判断)の組合せの正誤問題

問2 下線部bに関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  a 「故上人」とは,西行である。
  b 「故上人」とは,重源である。
  c 東大寺再建にあたって,陳和卿が登用された。
  d 東大寺再建にあたって,定朝が登用された。

 (1) a・c  (2) a・d  (3) b・c  (4) b・d

 この問題は正答率が比較的低かっただけではなく,上位層と中位層の差が大きかった問題です。東大寺復興に関して,a西行とb重源を間違えた受験生は少なかったようですが,c陳和卿とd定朝で,定朝を選んだ受験生が三分の一はいたようです。定朝は寄木造をはじめた人物で国風文化の時期に活躍した人物で基本用語といえるでしょう。しかし,陳和卿はやや難易度の高い用語でしょうか。難易度が高いといっても,重源の東大寺再建に協力した人物として,山川出版社の詳説日本史では本文中に出てくる人物です。陳和卿を知らなかった受験生が聞き覚えのある人物である定朝に引き寄せられたといったところでしょうか。昨年度あたりから顕著になっている,基本用語を消去して難易度の高い用語(知らない用語)を選択させるという出題パターンといえるでしょう。陳和卿を知っている受験生はできたわけですが,知らない用語を選ぶことで正答を得られるように過去問演習を通じて訓練をする必要があります。


【第3問 問4 問題番号16】 文化に関連する空欄補充

 B …蓮如の ア による布教で勢力を拡大した本願寺は,やがて一向一揆を軍事力として利用し,織田信長や豊臣秀吉と対峙する。
   移転を繰り返した本願寺の跡地のうち,古代以来の要所としても知られる場所には イ が建設された。信長や秀吉は,いわば一向一揆と戦いながら,政治的,経済的,軍事的な要所の掌握を目指したのである。

 問4 空欄 ア   イ に入る語句の組合せとして正しいものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

   (1) ア 題目  イ 安土城  (2) ア 題目  イ 大坂城
   (3) ア 御文  イ 安土城  (4) ア 御文  イ 大坂城

 この問題は正答率が低かった上に,上位層と中位層の差がついた問題です。(2)と(3)に誤答が多かったようです。昨年度も「題目」を考えさせる正誤問題の文章が出題されており,正答率が低かったのですが,今年度は蓮如の布教活動のひっかけに使われました。題目(=南無妙法蓮華経)は日蓮宗です。「蓮如・本願寺・一向一揆」とアは浄土真宗だとわかる十分なヒントもリード文にあるので間違えたくないところですが,中位層以下は室町時代の宗教まで学習する余裕はなかったのでしょうか。近年は頻出事項といえます。イについては,織田信長の安土城が本願寺の跡地ではないというのは当然のように思えるのですが,室町・戦国時代の浄土真宗や一向一揆の学習が不十分な受験生は,大坂城石山本願寺の跡地に建てられたという知識がなく,リード文からの類推ができなかったのでしょう。ちなみに山川出版社の詳説日本史では豊臣政権のところで本文中に書いてあります。問題番号14とともに消去法を意識しなければいけない問題が中位層以下はできていないということでしょうか。
■2013年・本試験・問題番号13,2010年・本試験・問題番号13で題目の出題


【第4問 問2 問題番号20】 江戸時代の産業・特産物

 問2 下線部bに関連して,近世の庶民生活にかかわる諸産業に関して述べた文として正しいものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  (1) 九十九里浜では鰊漁,土佐では鰯漁などがさかんに行われた。
  (2) 瀬戸内海沿岸を中心に,入浜式塩田(入浜塩田)が発達した。
  (3) 刈敷や草木灰が,金肥として普及した。
  (4) 灘の醤油,阿波の紅花などの特産品が全国各地に生まれた。

 この問題は江戸時代の産業や特産物に関連する問題で,正答率が低めに出る傾向があり,今回も例外ではありませんでした。(2)・(4)の誤答が多かったと思われます。さすがに中世から使用されている自給肥料=刈敷・草木灰,近世に使用が始まる金肥=干鰯・油粕などは基本知識です。高得点を狙うならば,(1)(2)(4)のような特産物を覚えることにも目配りが必要だということです。過去問でも頻出なので,過去問を解きながら復習し,知識を補うことは十分にできるでしょう。


【第4問 問3 問題番号21】 文化史に関連する年代順配列

問3 下線部cに関連して,近世の印刷物に関して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。

  Ⅰ 宣教師が伝えた活字印刷術によって,天草版(キリシタン版)が作られた。
  Ⅱ 『日本永代蔵』などの,浮世草子と呼ばれる小説が著された。
  Ⅲ 喜多川歌麿が,多色刷の浮世絵版画(錦絵)の絵師として活躍した。

  (1) Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ  (2) Ⅰ-Ⅲ-Ⅱ  (3) Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ
  (4) Ⅱ-Ⅲ-Ⅰ  (5) Ⅲ-Ⅰ-Ⅱ  (6) Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ

 年代順配列問題は,比較的,正答率が低い問題です。特に文化史が関連するとできない受験生が多いようです。この問題は中位層と下位層の差が大きかった問題です。センター試験で安定した点がとれない受験生は何ができないかをよく示しています。歴史用語としては,天草版,浮世草子(日本永代蔵),喜多川歌麿と基本用語で,知っていると思います。しかし,桃山文化,寛永文化,元禄文化,化政文化という区分ができないとダメです。文化区分を意識して歴史用語を確認するようにしないといけません。ちなみに山川出版社『詳説日本史』では新課程版より,化政文化が,「宝暦・天明文化」と「化政文化」に分かれ,近世の文化区分が4つ→5つになりました。次年度以降の出題を見なければ,どのように対応するかはわかりません。


【第4問 問4 問題番号22】 語句知識が必要な二文正誤問題

問4 下線部dに関連して,近世の海上交通や交易に関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 幕府はアイヌとの交易をさかんにするために,倭館を設けた。
  Y 北前船は,おもに上方で造った酒を江戸へ輸送した。

  (1)X 正  Y 正 (2)X 正  Y 誤 (3)X 誤  Y 正 (4)X 誤  Y 誤

この問題は特に正答率が低かったうちの一つです。誤答も②③に分かれていたということで,何がポイントかわからずに適当に解答した受験生が多いといえます。わからない時に①④は選ばないだろうと(笑)
 Xについて,倭館という用語を知らなかったのでしょうか。それとも「館」と勘違いしたのか。いずれにせよ,倭館は朝鮮の港におかれたので,アイヌとは関係ありません。Yは北前船という用語を知らない受験生が多かったということでしょうか。北前船は蝦夷地の海産物を西回り経由で輸送する船なので,Yの説明は当てはまりません。いずれも山川出版社『詳説日本史』では,本文中,太字で強調されている用語です。用語の知識があいまいな受験生が多いからでしょう。「センター試験では細かい用語は出ない!」などといって学習していると,教科書にある基礎用語も見落とします。特に問題を解いた後の復習では教科書の内容を確認をしてください

■2008年・本試験・問題番号24で対馬藩・倭館の出題
■2007年・本試験・問題番号23,2002年・本試験・問題番号22で関連問題


【第4問 問6 問題番号24】 地図と文章の組合せ問題

問6 下線部fに関連して,日本と諸外国との関係について述べた次の文X・Yと,下の地図上に示した場所a~dの組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。[地図省略]

  X 日米和親条約によって,下田とともにこの場所が開港された。
  Y 商船モリソン号が,この場所で砲撃を受けた。

  (1)X-a Y-c (2)X-a Y-d (3)X-b Y-c (4)X-b Y-d

 今年度の問題の中で,最も難問だったと考えられます。地図の問題は正答率の低い問題が多いのです。昨年度の中国・東南アジアの地図問題も正答率がかなり低かったと思われます。誤答は②に集中したと思われます。Xの文章は箱舘のことですが,さすがに間違えないでしょう。モリソン号は,異国船打払い令にもとづき,相模の浦賀と薩摩の山川で砲撃されています。山川の詳説日本史には「浦賀沖に接近し」という表現があります。おそらく,モリソン号事件は知っていてもどこで砲撃されたかを確認していない受験生が多かったのでしょう。しかも,dが長崎なので,レザノフ来航やフェートン号事件と混同した受験生も多数いるでしょう。江戸時代の外交で長崎は引っかかりそうです。ただ,d長崎だからこそ,消去法で解けるということではないでしょうか。昨年度の東南アジアの仏印,シンガポールも消去法で考える問題でした。少々,些末な内容の気がしますが,高得点をとるためには歴史地理を意識しておく必要があるということです。今年度も,昨年度と同様,地図の問題は2設問ありました。

 今回はここまでとします。次回は第5・6問,近現代史です。