今回から設問分析です。正答率の低かった難問の分析をします。

【第1問 問1 問題番号1】 時期の判断が必要な組合せの文章正誤問題

問1 下線部aに関連して,奈良時代の行政に関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  a 中央に大学,地方に国学が,官人の養成機関としてそれぞれ置かれた。
  b 太政官のもとに内務省などの八省が置かれて,政務を分担した。
  c 中央政府の支配は,現在の青森県や沖縄県まで広がった。
  d 地方からは,戸籍や計会帳などの公文書が政府に提出された。

(1) a・c  (2) a・d  (3) b・c  (4) b・d

 この問題では(4)の誤答が多かったようです。「計会帳」という聞きなれない語句がありますが,これはリード文と図版に説明があるので慎重に問題や図版を見れば答が書いあるようなものです。aとbでbを選んで間違った受験生が多いことになります。内務省は明治時代以降にできた組織で,古代の八省には存在しません。簡単な問題だと思ったのですが,意外でした。古代の律令官制を覚えていなかった受験生が多かったのでしょう。あるいは,「内務省」を「中務省」と誤認したのでしょうか。過去にも八省や大学・国学の出題はあります。各組織の名称を簡単な職務の内容をしっかり覚えておきたいところです。


【第1問 問4 問題番号4】 内容判断の必要な2文の正誤問題

問4 下線部dに関連して,江戸時代の教育に関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 岡山藩のつくった閑谷学校では,庶民の入学も許された。
  Y 幕府が江戸につくった懐徳堂からは,町人出身の学者も生まれた。

  (1)X 正  Y 正  (2)X 正  Y 誤  (3)X 誤  Y 正  (4)X 誤  Y 誤

 この問題は(1)の誤答が比較的多かったようですが,(3)・(4)を選んでいる受験生も少なくなかったと思われます。確かに難問だったでしょうか。Xについては閑谷学校が郷学であること,郷学は庶民も入学できたことの2段階の知識が必要です。しかし,2011年の問題番号23で郷学・閑谷学校が出題されていることを考えれば,過去問演習をしっかりやっていた受験生は判断できたでしょう。Yを正しいと判断した受験生が意外に多かったようですが,懐徳堂が「大坂の豪商によって設立」された「大坂の町人の塾」であることは重要な知識です。それが懐徳堂の特徴であるからです。富永仲基・山方蟠桃が懐徳堂出身の学者だということは覚えていたでしょうか。X・Yともに,文化史の分野である上,歴史用語を知っているだけでは正解できないことを考えると正答率が低かったことも頷けます。


【第2問 問4 問題番号10】 史料も利用した語句組合せの空欄補充(史料略)

B 大伴旅人・家持父子は,『 ア 』に多くの歌を残した歌人して著名であるが,中央・地方の官職を歴任した官人であった。…
   一方の家持は,越中守在任中に詠んだ歌を多く残している。下の史料は,春に実施する イ 業務のため,越中の国内を巡回していた旅先で詠んだ歌である。…

 問4 空欄 ア   イ に入る語句の組合せとして正しいものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

   (1) ア 懐風藻  イ 新嘗祭   (2) ア 懐風藻  イ 出挙
   (3) ア 万葉集  イ 新嘗祭   (4) ア 万葉集  イ 出挙

 この問題は(3)の誤答が比較的多かったと思われます。アについて大伴家持が『万葉集』の編集に深く関わったとされていることは知っている受験生が多かったのでしょう。しかし,イの新嘗祭と出挙で間違った受験生が多いのは意外でした。リード文,史料ともに決定的なヒントが「春の」という時期を示す言葉しかありませんでした。出挙は春に稲を貸し,秋に利息とともに回収するもの,新嘗祭は秋に収穫を感謝する祭祀なので,解答は出挙になります。ちなみに新嘗祭は天皇または神祇官が行う祭礼で,リード文からわかるように大伴家持が越中守=国司であったことを考えれば,新嘗祭は誤りだとわかります。この問題も表面的な語句の知識だけでは解答できない問題と言えるでしょう。語句は「知っている」だけじゃダメなのです。


【第2問 問5 問題番号11】 内容判断の必要な2文正誤

問5 下線部dに関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 中央と地方を結ぶ幹線道路である七道は,行政区画の名称でもあった。
  Y 東海道や東山道などの幹線道路には,一定の間隔ごとに駅家が置かれた。

  (1)X 正  Y 正  (2)X 正  Y 誤  (3)X 誤  Y 正  (4)X 誤  Y 誤

 この問題はわからなかった受験生が適当に解答したのではないかと思われるような誤答のパターンでした。上位層も比較的できていなかった問題だと思われます。おそらく,「七道」が行政区分でしかないと思っていた受験生が,「幹線道路」という表現に惑わされたため,七道と駅制が結びついていなかったのでしょう。七道は,幹線道路のことであり,行政区分でもありました。例えば,東海道の通っている国が東海道という行政区分に含まれるという考え方です。それを理解していないと,Yの選択肢も正誤の判断ができないでしょう。これも七道,駅制をそれぞれの歴史用語として知っていてもできなかった問題だといえます。七道を東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道と暗記しているだけではできませんね。律令国家の地方支配を理解しておく必要があります。これも2009年の第1問のテーマ史が地方行政区画の歴史的変遷で,類題が出題されていたことを考えると,過去問演習でしっかり押さえておくべき問題でした。
■2009年・本試験・第1問のテーマ史が地方行政区画の歴史的変遷,2009年・本試験・問題番号10で駅制の出題

 今回はここまでとします。次回は第3・4問,中世・近世の分析です。