今回は第3・4問についてです。
 ※頻度・丸数字は山川出版社の『日本史B用語集』により,教科書11種類中の掲載数。


【第3問】中世の宗教・文化

 第2問に続いて,「宗教・文化」ですが,設問(選択肢の判断)は多岐にわたります。文化史とはいえ,大部分は時期の判断と,基本的な語句で解答は出ます。問2が誤文を見つける消去法では解きにくかったと思いますが,全体としては標準的な問題です。

問1.鎌倉仏教の問題。Xの『選択本願念仏集』は法然の著書で,親鸞の著書は『教行信証』です。Yの題目は「南無妙法蓮華経」で,「南無阿弥陀仏」は念仏です。基本的な知識で両方とも誤文と判断できます。ちなみに法然・親鸞・題目(南無妙法蓮華経)・日蓮は頻度⑪です。『選択本願念仏集』は頻度⑩,南無阿弥陀仏は頻度⑩です。

問2.誤文の判断が少し難しかった問題かもしれません。本来は「消去法」で解きたいところですが,センターでは頻出の六勝寺(法勝寺)なので,過去問をしっかりやっていた受験生は①が正文と判断できたでしょうか。②の誤文は,平氏の南都焼打ち(東大寺・興福寺)の知識から判断できるでしょう。③の誤文は「天皇家出身の慈円」が誤りの判断のポイントになっていますが,慈円が藤原(九条)兼実の弟で摂関家出身だと知っていたでしょうか。さらに「それを諌める書物」というのが『愚管抄』ですが,書かれた目的を知っていたでしょうか。山川『詳説日本史』では,脚注に「慈円は,幕府開創期に頼朝と親しかった摂政・関白九条兼実の弟で,天台座主の要職にもあり,承久の乱を前にして後鳥羽上皇を中心とした討幕計画をいさめるねらいもあって『愚管抄』を著した(p108)」とあり,実教『日本史B』は本文に「九条家から天台座主となった慈円は『愚管抄』のなかで,武家政権の出現にいたる現実を「道理」の観念でとらえて鎌倉幕府との協調を訴えた(p128)」とあります。一応,教科書の知識で,慈円は頻度⑪ですが,やや難かもしれません。④の誤文は「奥州藤原氏は秀衡が源頼朝に討たれ,滅亡した」が判断ポイントです。正しくは秀衡の死後,泰衡の時に奥州藤原氏は滅ぼされます。やや細かい知識のような気はしますが,山川『詳説日本史』では「藤原秀衡の死後,子の泰衡が頼朝の要求に屈服して義経を殺すと,… 1189(文治5)年,奥州に軍を進めて泰衡を討ち,…(p89)」とあり,実教『日本史B』にもほぼ同じ記述があります。ちなみに中尊寺金色堂,藤原秀衡は頻度⑩,泰衡は頻度⑧の語句です。

問3.絵図と文章のヒントから空所を埋める問題です。甲は問題文に従って絵図を見ればわかります。すべての情報が入っています。乙は「「八幡宮」(社殿)と「堂」(仏堂)とが隣り合っている」という表現から神仏習合とわかり,唯一神道は室町時代で,鎌倉時代ではないことから判断できるでしょう。

問4.空所補充問題ですが,選択肢はすべて頻度⑪の基本的な語句です。正答率は高いでしょう。

問5.「足利義満」に関する正誤判断で,センターの室町時代の出題としては定番です。②の初代鎌倉公方の基氏が足利尊氏の子だと分かっていれば誤りだと判断できて,それが解答です。①の後亀山天皇が頻度⑦,後小松天皇が頻度⑥とやや細かい知識ですが,正文なので解答を導き出すポイントになっていません。

問6.年代順配列問題です。Ⅰ栄西・Ⅱ蘭溪道隆・北条時頼が鎌倉時代,Ⅲは寧波の乱の記述なので室町時代です。Ⅰ・Ⅱの判断ができればよいのですが,栄西の活動時期が鎌倉初期だと分かっていたでしょうか。ちなみに建長寺・栄西は頻度⑪,蘭溪道隆は頻度⑨,寧波の乱は頻度⑧です。寧波の乱は歴史用語として載っていない教科書があるのでしょう。



【第4問】近世の政治・経済・社会

 近世史は,今年に限らず,例年,社会経済史が多めです。特に特記することはありませんが,この問題は特にリード文・下線部をしっかり読むことが重要だったと思われます。問1,問2あたりは,リード文や下線部を軽視した受験生は間違ったかもしれません。また,問6は意外に正答率が低いかもしれません。年代順配列問題も簡単とは言えず,全体的にはやや難でしょうか。

問1.空欄イは「5代将軍」というヒントがあるので問題ないでしょう。空欄アはリード文をしっかり読まなかった受験生は解答が見えなかったかもしれません。「琉球は[ ア ]を…」とありますが,謝恩使・慶賀使ともに琉球の使節です。ヒントはその前,「(4代将軍家綱の)就任にあたり,…また,琉球は…」の部分で,琉球より将軍代替わりに派遣されてくる使節「慶賀使」です。ちなみに謝恩使は頻度⑨,慶賀使は頻度⑩です。

問2.写真は「日光東照宮の陽明門」で,東照宮は頻度⑪,陽明門は頻度⑦です。写真を見たことがあればすぐにわかるのですが,見たことがなかった人はどうしましょう。結局,下線部の「神格化された家康の権威」から,家康が東照大権現として東照宮にまつられたことを想起できればよいでしょう。後は文章というよりは,①のキーワード「権現造(頻度⑨)」の語句選択に近い問題です。

問3.生類憐れみの令の問題ですが,初見史料の読解問題なので,知識はいりません。その場で史料を丁寧に読んでください。「捨て子これあり候わば,早速届くに及ばず」でaが誤文とわかります。「直に養い候か,又は望みの者これあり候わば,使わすべく」からbが正文とわかります。「犬ばかりに限らず,…あわれみ候」からcが誤文,dが正文とわかります。

問4.表の読み取り問題ですが,知識も必要です。④が正文ですが,開港後に発行されたのが「万延小判」だと知っている必要があります。①は表の数字を追いかければ,正徳小判で成分比が上がっているのはわかるでしょう。②も表の数字を追いかければ,文政小判以前に元禄小判の銀が40%を超えています。③は新井白石の建議で正徳小判を発行したことを知っていれば,表の数字を見るだけです。新井白石なら,正徳小判を知らなくても正徳の治からも類推できます。

問5.年代順配列問題です。Ⅰは人足寄場から寛政の改革,Ⅱは天保の飢饉を契機に起こった大塩平八郎の乱とすぐに時期の判断はできるでしょうか。Ⅲの関東取締出役が大御所(化政)時代と判断できるかどうかがポイントでしょう。やや事項の時期の幅が狭いでしょうか。Ⅰ寛政の改革→Ⅲ大御所時代→Ⅱ天保の飢饉で配列できます。ちなみに人足寄場・大塩平八郎は頻度⑪,関東取締出役は頻度⑨です。

問6.江戸後期のロシアとの関係ですが,意外に正答率は低いかもしれません。根拠は2004年(問題番号22)に類題があったのですが,正答率が3割程度だったこと,「正・正」の組合せであることです。しかも,Xは根室・漂流民(大黒屋幸太夫を想起できるか),Yは国後島と判断ポイントが細かいのです。ちなみにラクスマンは頻度⑩,ゴローニンは頻度⑦,ゴローニン事件は頻度⑧です。正文なので判断しなくてもいいともいえますが…。

 次回は第5・6問です。