家の本棚に読まずに眠っていた本を引っ張り出してきて読みました。脇田晴子氏といえば,中公新書の『室町時代』がよかったです。授業をするときの参考になる内容が多いと思います。
 今回読んだ本はタイトル通り,中世に生きた女性について書かれたもので,一部,古代や近世にも入りますが,中心は中世です。

 北条政子や日野富子など少しでも歴史を知る者には馴染みのある人物などを通して,中世の「家」の形成について書かれており,単に「女性の地位は高かった」というものではありません。
 脇田氏は,夫婦とその間にできた子どもが同居して家族をつくり、それが核となって「家」を形成するのが中世のはじまりで,嫁取婚による夫婦同居によって、はじめて同じ家に暮らす家族というものが成立したとしています。そして,嫁取婚によって女性の地位が低下したのではなく,女性の地位の低下が嫁取婚を願わせるようになったと。
 中世は,「家」を中心に廻る構造になっているとすれば,家長を支えて家政をとりしきる女性(正妻・母親)が状況によって発言力を持つというのは理解できます。北条政子や日野富子も「将軍家」を支える女性で,政子は頼朝の死,富子は政治能力のない義政,と状況は微妙に違いますが,政治を取り仕切る立場になったと言えます。
 こうしてみると,女性の所領相続の権利がなくなり,地位が低下していくという,教科書の説明と矛盾するような気がしますが,日野富子のような女性が出てくる理由は,「女の地位は低いが、母親の地位は高い」という説明がわかりやすいのではないでしょうか。嫁取婚により中世的な「家」が形成され,確かに家族の中で嫁に行く娘の地位は低くなりますが,女性は正妻・母親として「家」に殉じることによって,その地位を確保していたのです。

 大学入試では,近年,女性史の出題が流行っているとは言えませんが,中世社会を理解する参考として読んで損はないでしょう。脇田晴子氏の一般向けの本はわかりやすいですね。