対象としているのは,藤原良房・基経の摂関政治成立期から道長・頼通の全盛期までです。
 摂政・関白の変遷を,太政大臣の「職務」としてはじまり,延喜・天暦の治以降,独立した「官職」となっていくという展開で説明しており,わかりやすいものでした。その他,天皇と蔵人所や検非違使など令外官の関係,摂政・関白の政務などは,教科書の説明を補える内容であったと思います。
 さらに佐々木氏には,山川出版社の日本史リブレットでも,『受領と地方社会』というのがありますが,今回の著書でも受領の富の集中や摂関家など上級貴族への私的奉仕についてはコンパクトにまとまっていて,参考になりました。
 気になった点は,藤原道長が摂政を辞した後も権力を握っていたことについての説明で,「その力の根拠は天皇・東宮の外祖父であり、かつ摂関の父であるところ。これは一家の家長が国政の頂点に立つという院政の一つの源流となった。」という部分です。他でアドバイスもいただきましたが,上島享氏も同様の議論をしているそうなのでまた,読んでみたいと思います。

 摂関政治期の受領と上級貴族の関係については,近年でも,2010年東大(摂関政治期の貴族社会),2009年京大(国司制の変容)など出題されているので,今回の本は参考になりました。