大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2014年06月

2014年 センター日本史B 本試験 設問分析 ~その2~

 今回から設問分析です。正答率の低かった難問の分析をします。

【第1問 問1 問題番号1】 時期の判断が必要な組合せの文章正誤問題

問1 下線部aに関連して,奈良時代の行政に関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  a 中央に大学,地方に国学が,官人の養成機関としてそれぞれ置かれた。
  b 太政官のもとに内務省などの八省が置かれて,政務を分担した。
  c 中央政府の支配は,現在の青森県や沖縄県まで広がった。
  d 地方からは,戸籍や計会帳などの公文書が政府に提出された。

(1) a・c  (2) a・d  (3) b・c  (4) b・d

 この問題では(4)の誤答が多かったようです。「計会帳」という聞きなれない語句がありますが,これはリード文と図版に説明があるので慎重に問題や図版を見れば答が書いあるようなものです。aとbでbを選んで間違った受験生が多いことになります。内務省は明治時代以降にできた組織で,古代の八省には存在しません。簡単な問題だと思ったのですが,意外でした。古代の律令官制を覚えていなかった受験生が多かったのでしょう。あるいは,「内務省」を「中務省」と誤認したのでしょうか。過去にも八省や大学・国学の出題はあります。各組織の名称を簡単な職務の内容をしっかり覚えておきたいところです。


【第1問 問4 問題番号4】 内容判断の必要な2文の正誤問題

問4 下線部dに関連して,江戸時代の教育に関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 岡山藩のつくった閑谷学校では,庶民の入学も許された。
  Y 幕府が江戸につくった懐徳堂からは,町人出身の学者も生まれた。

  (1)X 正  Y 正  (2)X 正  Y 誤  (3)X 誤  Y 正  (4)X 誤  Y 誤

 この問題は(1)の誤答が比較的多かったようですが,(3)・(4)を選んでいる受験生も少なくなかったと思われます。確かに難問だったでしょうか。Xについては閑谷学校が郷学であること,郷学は庶民も入学できたことの2段階の知識が必要です。しかし,2011年の問題番号23で郷学・閑谷学校が出題されていることを考えれば,過去問演習をしっかりやっていた受験生は判断できたでしょう。Yを正しいと判断した受験生が意外に多かったようですが,懐徳堂が「大坂の豪商によって設立」された「大坂の町人の塾」であることは重要な知識です。それが懐徳堂の特徴であるからです。富永仲基・山方蟠桃が懐徳堂出身の学者だということは覚えていたでしょうか。X・Yともに,文化史の分野である上,歴史用語を知っているだけでは正解できないことを考えると正答率が低かったことも頷けます。


【第2問 問4 問題番号10】 史料も利用した語句組合せの空欄補充(史料略)

B 大伴旅人・家持父子は,『 ア 』に多くの歌を残した歌人して著名であるが,中央・地方の官職を歴任した官人であった。…
   一方の家持は,越中守在任中に詠んだ歌を多く残している。下の史料は,春に実施する イ 業務のため,越中の国内を巡回していた旅先で詠んだ歌である。…

 問4 空欄 ア   イ に入る語句の組合せとして正しいものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

   (1) ア 懐風藻  イ 新嘗祭   (2) ア 懐風藻  イ 出挙
   (3) ア 万葉集  イ 新嘗祭   (4) ア 万葉集  イ 出挙

 この問題は(3)の誤答が比較的多かったと思われます。アについて大伴家持が『万葉集』の編集に深く関わったとされていることは知っている受験生が多かったのでしょう。しかし,イの新嘗祭と出挙で間違った受験生が多いのは意外でした。リード文,史料ともに決定的なヒントが「春の」という時期を示す言葉しかありませんでした。出挙は春に稲を貸し,秋に利息とともに回収するもの,新嘗祭は秋に収穫を感謝する祭祀なので,解答は出挙になります。ちなみに新嘗祭は天皇または神祇官が行う祭礼で,リード文からわかるように大伴家持が越中守=国司であったことを考えれば,新嘗祭は誤りだとわかります。この問題も表面的な語句の知識だけでは解答できない問題と言えるでしょう。語句は「知っている」だけじゃダメなのです。


【第2問 問5 問題番号11】 内容判断の必要な2文正誤

問5 下線部dに関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

  X 中央と地方を結ぶ幹線道路である七道は,行政区画の名称でもあった。
  Y 東海道や東山道などの幹線道路には,一定の間隔ごとに駅家が置かれた。

  (1)X 正  Y 正  (2)X 正  Y 誤  (3)X 誤  Y 正  (4)X 誤  Y 誤

 この問題はわからなかった受験生が適当に解答したのではないかと思われるような誤答のパターンでした。上位層も比較的できていなかった問題だと思われます。おそらく,「七道」が行政区分でしかないと思っていた受験生が,「幹線道路」という表現に惑わされたため,七道と駅制が結びついていなかったのでしょう。七道は,幹線道路のことであり,行政区分でもありました。例えば,東海道の通っている国が東海道という行政区分に含まれるという考え方です。それを理解していないと,Yの選択肢も正誤の判断ができないでしょう。これも七道,駅制をそれぞれの歴史用語として知っていてもできなかった問題だといえます。七道を東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道と暗記しているだけではできませんね。律令国家の地方支配を理解しておく必要があります。これも2009年の第1問のテーマ史が地方行政区画の歴史的変遷で,類題が出題されていたことを考えると,過去問演習でしっかり押さえておくべき問題でした。
■2009年・本試験・第1問のテーマ史が地方行政区画の歴史的変遷,2009年・本試験・問題番号10で駅制の出題

 今回はここまでとします。次回は第3・4問,中世・近世の分析です。











2014年 センター日本史B 本試験 設問分析 ~その1~

 久しぶりにブログを書きます。やはり原稿などもあり,普段はブログを書いている余裕はありません。
 例年通り,センター日本史B本試験の難問の分析をします。受験生は過去問を解いた際の復習などの参考にしてください。
 今回は全体的なコメントです。

【全体についてのコメント】

○平均点・難易度について
 2014年度は平均点が66.32点と昨年度(62.13点)に比べ4点ほど上がりました。ここ5年は60点台で推移しているので,特に易化したわけではなく,センター試験としては標準的な問題と考えてよいでしょう。次年度もこの傾向が続くと考えてよいと思います。ただ,今年度は難問と易問の差が激しく,誰でもできる簡単な問題を入れることで平均点を調整した感じがします。これは昨年度からの傾向です。ちなみに正答率の低い差がつく難問が15問程度,正答率が高い(誰でもできる)易問が8問程度あったと考えられます。70点はそれなりに学習していれば取れますが,90点以上の高得点をとるためには丁寧な学習が必要です。
 特に難問を落としている受験生は,歴史用語を知っている,というだけで,その用語の意味や他の事項とのつながりが意識できていないのではないかと思われます。そのため,知らない用語,難易度の高い用語が出題されると,正誤の判断ができず,知っている用語を手掛かりに消去法で解くこともできていないようです。センター試験は,歴史用語や西暦年を知っているだけでは高得点がとれないのです。

○出題形式について
 今年度も例年通り,文章正誤問題が出題の中心でした。正答率が低めになる年代順配列問題が昨年度の3問から5問となりましたが,想定の範囲内の出題だったと言えます。地図や写真などの図版を利用した問題も増える傾向にあり,学習の際には,図説資料を有効に活用する必要があります。
 近年,目立つのが各大問のパターン化です。第2問の古代では,教科書に掲載されている基本資料の出題が2011年より続いています。今年は『魏志倭人伝』でした。第4問の近世では,2011年から初見史料の出題が続いています。正答率が高い問題が多いので,その場で慎重に対処すれば警戒する必要はありません。第5問では,グラフ・表の読解を要する問題が3年連続の出題でした。普段から図説資料などでグラフや表を見て意味を考える訓練をしておきたいところです。中でも,地図の問題(問題番号24)と表の読解問題(問題番号28)は特に正答率が低かったので注意が必要です。

○時代について
 昨年度は近現代の平均点が低く,難問が多かったのですが,今年度は中世・近世の平均点が低く出ました。ただ,例年は近現代に正答率が低い問題が固まるので,近現代についての学習は慎重にしておきたいところです。今年度は,原始の単独設問が2問出題されました。2009年以来の出題となります。次年度はどうなるかわかりませんが,選択肢のレベルでは出題されるので,原始の学習で手を抜いていいということではありません。現代史の出題も例年並みですが,昨年同様,近代と現代をまたぐ設問が増えています。第1問の問6(問題番号6)の産業別の就労者の構成比のグラフや,第6問の問5(問題番号33)の満州事変以前の軍事産業の問題です。問題番号6は簡単な問題でしたが,問題番号33は正答率の低い問題でした。現代史の学習がしっかりできていない受験生が多いということでしょうか
 いずれにせよ,センター試験では時代による出題の偏りはありません。すべての時代について丁寧に学習しておく必要があります。

○分野について
 今年度は,外交史の出題が極端に減り,政治と社会経済の出題が中心でした。何年かおきに外交史の出題が極端に増えるのですが,それが昨年度だったということでしょうか。必ずしも「国際的視野=外交史」ということではないと思いますが,少し極端な感じはします。一方で,文化史は今年度も4分の1程度は出題され,安定しています。正答率の低い問題が必ず文化史に含まれます。高得点を狙うなら文化史の学習を丁寧にやりましょう。政治や外交では正答率の低い問題が少ないのです。高校によっては文化史を授業時間の都合などで扱えない(扱わない)場合もあります。特に学校の授業を中心に学習を進めている高3受験生は学校のカリキュラムに注意しましょう。

 今回はここまでにします。次回から個別設問について,第1・2問の分析をします。
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