大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2013年06月

2013年 センター日本史B 本試験 設問分析~その8~

 最後は気になった問題をみてみます。

◆第2問 問2 問題番号8◆ ◎教科書掲載史料の問題 

史料 興死して弟武立つ。自ら使持節都督倭・百済・新羅・任那・加羅・秦韓・慕韓七国諸軍事(注1)安東大将軍  倭国王と称す。順帝の昇明二年(注2)、使を遣して上表(注3)をして曰く、「封国(注4)は偏遠にして、藩を外に  作す。昔より祖禰(注5)躬ら甲冑をつらぬき、山川を跋渉して寧処に遑あらず(注6)。東は毛人(注7)を征する  こと五十五国、西は衆夷(注8)を服すること六十六国、渡りて海北(注9)を平ぐること九十五国。……」と。

(注1) 使持節都督倭・百済・新羅・任那・加羅・秦韓・慕韓七国諸軍事:倭以下の七国に対する中国式の軍事行政官の職名。百済~慕韓は朝鮮半島南部の国名。
(注2) 昇明二年:中国の年号。478年。
(注3) 上表:君主に文書を提出すること。
(注4) 封国:領域,自分の国。
(注5) 祖禰:父祖とする説が有力。
(注6) 寧処に遑あらず:一所に落ち着いている暇もない。
(注7) 毛人:東国の人々か。
(注8) 衆夷:西国の人々か。
(注9) 海北:朝鮮半島のことか。


問2 下線部(b)に関連して,前ページの史料について述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
  
  ① 武は父祖以来,朝鮮半島南部を武力制圧し,中国の支配をめざした。
  ② 武は朝鮮半島南部と同盟関係を結んで,中国を威嚇した。
  ③ 武は中国式の官職名を称して,中国からの独立を主張した。
★④ 武は中国式の官職名を称して,朝鮮半島南部の支配権の承認を要請した。

 正答率は標準ですが,これで第2問では3年連続,教科書に掲載されている史料が出題されました。【参考】にあげた昨年度の山上憶良「貧窮問答歌」は史料を見たことがなかった受験生はできなかった可能性が高く,正答率が低いものでした。教科書に掲載されている史料は今後も出題される可能性が高いので,学習の際に確認しておくようにしましょう。さらに第3問の問3(問題番号15)では,紀伊国桛(かせ)田荘の図が出題されています。山川出版『詳説日本史』,実教出版『日本史B』などの教科書に掲載されている図です。教科書に掲載されている資史料が重要であることがわかるでしょう


【参考】2012年 本試験  問題番号9 

 こうした国家体制のもと,民衆は厳しい税の取立てに苦しんだ。(c)次の史料は,そうした民衆の生活の様子を詠んだ歌である。

  …… かまどには 火気(ほけ)吹き立てず 甑(こしき)(注1)には 蜘蛛(くも)の巣かきて 飯炊(いいかし)くことも忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに(注2) いとのきて(注3) 短き物を端(はし)切ると 言へるがごとく しもと(注4)取る 五十戸良(さとおさ)(注5)が声は 寝屋処(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ ……
(『万葉集』巻第5)

(注1) 甑:米や豆などを蒸すための器。
(注2) のどよひ居るに:細い力のない声を出していると。その前の「ぬえ鳥の」は「のどよひ居るに」にかかる枕詞。
(注3) いとのきて:とりわけ(注4) しもと:むち
(注5) 五十戸良:里長

問3 下線部(c)に関連して,この史料や,そこからうかがえることに関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の①~④のうちから一つ選べ。 

 a この歌は,山上憶良が作ったものである。
 b この歌は,東国の民衆が作ったものである。
 c この歌が作られたころの国司は,郡司や里長を通じて徴税を行っていた。
 d この歌が作られたころの国司は,在庁官人を通じて徴税を行っていた。

  ① a・c  ② a・d  ③ b・c  ④ b・d


【参考】2011年 本試験  問題番号10 

  (前略)律令体制が整ったのちも仏教は重視されつづけ,(c)次に掲げる史料の法を契機に,政府は寺院にも大規模な開墾とその田地の私有を認めた。

   詔して曰(いわ)く,「…今より以後,(墾田は)任(まま)に(注1)私財と為(な)し,三世一身を論ずること無く,咸悉(みなことごと)く永年取る莫(なか)れ。其(そ)れ親王の一品(いっぽん)及び一位は五百町,…初位已下庶人(そいいかしょにん)に至るまでは十町。但し郡司は,大領(たいりょう)・少領(注2)に三十町,主政・主帳(注3)に十町。…」

(注1) 任に:意のままに
(注2)(注3) 大領・少領,主政・主帳:いずれも郡司の職名

問4 下線部(c)に関連して,この法とこの法が出されたころの開墾に関して述べた文として誤っているものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

 ① 開墾を認められた面積には,身分により制限が設けられた。
 ② 開墾された田地は租を納めるものとされた。
 ③ この法の施行ののち三世一身法が発布された。
 ④ 有力な貴族や大寺院は,付近の一般農民や浮浪人を使って開墾を行った。


 以上,今年度の問題の分析を終わります。次回は7月ごろに公表される「試験問題評価委員会報告書」をチェックした感想をあげて今年度のセンター分析を終わります。










2013年 センター日本史B 本試験 設問分析~その7~

 今回も第6問の近現代です。

◆第6問 問4 問題番号32◆ ◎年代による時期判断と内容

問4 下線部(c)に関連して,1930年代の経済状況や経済政策に関して述べた次の文a~dについて,正しいものの組合せを,下の①~④のうちから一つ選べ。

  a 昭和恐慌によって困窮した農家から欠食児童や女子の身売りが続出して,深刻な社会問題となった。
  b 昭和恐慌による急激なインフレーションを抑制するため,政府は経済安定九原則を発表した。
  c 政府は,国家総動員法にもとづいて価格等統制令を公布して公定価格を定め,経済統制を強化した。
  d 政府は,日中戦争における占領地の経済開発のため,日本の紡績業に在華紡とよばれる国策会社を設立させた。

  ★① a・c    ② a・d    ③ b・c    ④ b・d

 これは標準よりは正答率が低かった問題です。センター試験における近現代の社会経済としては定番の「~年代」で時期を判断させる問題です。センター試験においては1870年代から10年単位で社会経済の動向を整理しておく必要があります。この問題は②に誤答が偏っています。cとdの判断に迷った受験生が多いようです。dの「在華紡」の記述は明らかに誤っていると思うのですが,「在華紡」を正しく理解できていなかった受験生が多かったのでしょう。一方で,cの選択肢ですが,第一次近衛内閣で制定された「国家総動員法」は知っていると思います。ただ,その勅令である価格等統制令はどうでしょうか。2000年に追試験ではありますが,以下の問題が出題されています。

【参考】2000年 追試験 問題番号31

問7 下線部(g)に関連して,高橋財政期の経済政策や経済状況を述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 

 ① 犬養毅内閣は,物価を引き下げ,産業を合理化して景気を回復しようとした。
 ② 価格統制などの計画経済化が進行する一方で,闇価格が横行した。
 ③ 産業報国会が工場・職場に結成された。
 ④ 金輸出を再禁止し,管理通貨制度へ移行した。

 やはり過去問を丁寧にやっていたら出題されています。一見,難問ですが,過去問をしっかり研究していた受験生はできたはずです。

◆第6問 問5 問題番号33◆ ◎時期の判断が必要な正誤問題,文化史

問5 下線部(d)[日中戦争の勃発以後,思想統制や言論弾圧は厳しさを増し,軍部に対する批判はますます困難になった]に関して述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

   ① キリスト教徒の内村鑑三が,神社参拝を拒否して大学教授の職を追われた。
   ② 人民戦線の結成をはかったとして,経済学者の滝川幸辰らが検挙された。
   ③ 社会主義者の北村透谷が,弾圧や投獄の結果,国家主義者に転向した。
 ★④ 実証的な古代史研究を進めた津田左右吉の著作が,発禁処分をうけた。

 文化史の中でも思想関連は苦手な受験生が多いところでしょうか。①の内村鑑三は明治時代に出てくるキリスト教徒なので間違った受験生は少ないようです。②の人民戦線,滝川幸辰は時期が近い出来事なので,比較的誤答が多かったようです。しかし,③の誤答が一番多かったのは意外でした。ロマン主義文学の母体となった雑誌『文学界』を創刊した人で明治時代に出てきます。用語頻度は⑩で多くの教科書にも掲載されています。文化史はどうしても作品・作者などの暗記をしなければならない部分があります。覚えるべきことはしっかり覚えましょう。

◆第6問 問8 問題番号36◆ ◎1990年代の問題

問8 下線部(g)に関連して,独立後の日本の国際関係について述べた文として誤っているものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

  ① MSA協定により,米国の援助と引換えに自衛力増強を義務づけられた。
  ② 為替の自由化を進めるため,国際通貨基金(IMF)8条国に移行した。
  ③ 日本の貿易黒字が増大し,欧米諸国とのあいだで貿易摩擦が深刻化した。
★④ 第4次中東戦争に際して,PKO協力法にもとづき自衛隊の派遣を行った。

 正答率がかなり低い問題の一つで,主に①②の誤答が多かった問題です。IMFについては以下に参照しているように過去に出題されているので,過去問をやっていた受験生はできたはずです。この問題ではPKO協力法は出題されています。最初(その1)でも書いたように「1990年代前半」の55年体制が崩壊した細川護熙内閣までは学習しておいた方がいいでしょう。今後も出題される可能性があります。山川出版『詳説日本史』,実教出版『日本史B』でも「PKO協力法」は本文中にあります。

【参考】 2004年 本試験 問題番号32

問8 下線部(f)に関連して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,以下の①~④のうちから一つ選べ。
 
 Ⅰ 日ソ共同宣言によってソ連との国交が正常化された。
 Ⅱ 最初の先進国首脳会議(サミット)が開かれ,日本もこれに参加した。
 Ⅲ IMF8条国に移行し,いっそうの貿易と資本の自由化を進めた。

 ① Ⅰ―Ⅲ―Ⅱ ② Ⅱ―Ⅰ―Ⅲ ③ Ⅲ―Ⅰ―Ⅱ ④ Ⅲ―Ⅱ―Ⅰ

 以上,第5・6問の近現代の問題の分析でした。次回はその他,気になった点をみていきます。







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