大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2012年11月

参勤交代の意図について~「大名の経済力を削減するため」というのは正しいか~

 参勤交代について,以前,Twitterでつぶやいた内容をまとめておきます。
 
 日本史の論述問題で「参勤交代」を説明させると,「大名の経済力を削減し,その勢力を抑え,反乱を防ぐ目的…」という答案が一定数存在します。割合にすると,7割前後でしょうか。相変わらず,古典的な理解が一般的には広がっているようです。
 実際にネット検索すると,ウィキベディアで「目的は、諸大名に出費を強いることでその勢力を削ぎ、謀反などを起こすことを抑止するため」とあります。その他,同様の見解は各所にみられます。「ヤフー知恵袋」や,引用はしませんがさまざまなブログなどなど…。 

 現在の高校の教科書を見てみましょう。代表的な山川出版社『詳説日本史』の参勤交代の説明では「そのなか(武家諸法度寛永令)で,大名には国元と江戸とを1年交代で往復する参勤交代①を義務づけ,大名の妻子は江戸に住むことを強制された。注① 規定では在府(江戸)1年・在国1年であるが,関東の大名は半年交代であった。参勤交代によって交通が発達し,江戸は大都市として発展したが,大名にとっては,江戸に屋敷をかまえて妻子をおき,また多くの家臣をつれての往来自体も,多額の出費となった。(p162)」とあります。
 山川『詳説日本史』(2006年度版)の記述では,参勤交代の影響として「大名にとっては,…多額の出費となった」とありますが,「大名の経済力削減・反乱防止が目的とは書いていません。あくまで「結果として出費が多かった」ということです。これは最近の教科書で内容が変わったのかといえば,そうではなく,山川出版社の1991年度版教科書も,ほぼ同様の記述になっっています。手元に小・中学校の教科書はないのですが,どう書いてあるのでしょうか。

 次に江戸時代について研究者の書いた一般書の「参勤交代」に関する記述を見てみましょう。
 山本博文氏の『参勤交代』(講談社現代新書)には,「江戸幕府における参勤交代も,秀吉の時代と同様に大名の服属儀礼であって,参勤しないと幕府への反逆であると解釈された。…参勤は,将軍への服属の意思の表明であり,江戸城での拝謁は,諸大名の服属儀礼である。」とあり,また,丸山雍成氏の『参勤交代』(吉川弘文館)では「参勤交代は,単なる軍役体系の一環という次元を超えて,主従制下の政治支配の主柱-特に大名知行制にもとづく分権性を克服して,集権的統治を実現するための槓桿-として,制度的に確立をみたというべきだろう」としています。
 以上から分かるように,参勤交代は将軍が主従関係を維持するために大名に課した平時の軍役で,大名の将軍への忠誠を示す儀礼だったのです。そして,江戸幕府が大名の地方割拠を抑制し,中央集権化を進める効果を持ったものでした。つまり,「参勤交代による大名の財政窮乏」は目的ではなく,幕府が意図せざる結果だったのです。

 それでは,「大名の経済力削減」について考えてみましょう。まず,「参勤交代の制度化」とは,何を意味するのでしょうか。『近世の歴史』(中央公論社・3支配のしくみ)には,「参勤交代の制度については,この寛永十二年の武家諸法度によって始められたと解するならば,それは誤りである。…すでに実施されていたものを,毎年四月を交代時期と定めて,隔年の参勤という形で制度化したことがその意義となる。」とあります。大名の江戸への参勤はすでに行われていたのですが,不定期で江戸に来たら将軍の許可がなければ帰国することはできなかったのです。そのため,参勤交代が制度化され,不定期であったものが,隔年となったことは大名にも都合がよかったといえるでしょう。それに「参勤交代が隔年に変化していく理由は,毎年参勤が大名の負担になっていたからであろう。…豊臣家が滅びた今,毎年の参勤を要求することはそれほど意味のあることではなかった」(山本『参勤交代』) のです。 
 そして,次に大名の参勤交代の経費については,「近世前期の寛永・寛文のころまでは,幕府は参勤してくる大名に対して応分の合力米を支給するのを常としていた…この合力米支給の事は,幕府の財政が悪化した五代将軍綱吉の時代のころに廃止された」(『近世の歴史』3支配のしくみ)とあり,さらに参勤交代を制度化した武家諸法度の寛永令では,「大名小名、在江戸交替、相定ル所也。毎歳夏四月中参勤致スベシ。従者ノ員数近来甚ダ多シ、且ハ国郡ノ費、且ハ人民ノ労也。向後其ノ相応ヲ以テ、之ヲ減少スベシ」と,むしろ従者の人数が多いことについて,領国の支配の上での無駄,領民の負担として減少するように命じています。
 以上から江戸幕府は参勤交代による「大名の窮乏」について,むしろ気を使っているといえます。経費節減のために従者の数を減らすことを命じたり,国持大名には経費を補う米の支給をしています。やはり「大名の経済力削減による反乱防止というのは参勤交代の目的・意図とはいえないでしょう

 ちなみに,杣田善雄氏の『将軍権力の確立』(吉川弘文館)には,「法度に明文化されていないが,実際にこの規定(参勤交代)の適用を受けたのは外様大名であった。…譜代大名は,常時在府を原則として江戸に集結していることが通常のすがたであったから,この時点では参勤交代の対象外であった」とあります。当初,参勤交代をしていたのは,外様大名だけだったのです。譜代大名の参勤交代は「寛永飢饉さなかの寛永19(1642)年に交替で帰国して領内経営にあたるように命じられ,それ以降,関八州の譜代大名は半年交替,他は1年交代と,譜代大名も参勤交代制度のもとに編入されることになった」(杣田『将軍権力の確立』)ということです。

 「参勤交代には,大名の経済力を削減し,その勢力を抑え,反乱を防ぐ目的があった」という論述問題の答案が早くなくなることを願っています。

「日本史史料問題の攻略bot」について

◆日本史史料問題の攻略bot◆

日本史の知識が定着し,過去問などを解き始めると,日本史については「史料問題」が気になる受験生が多いと思います。中には史料問題を苦手としている人も多いでしょう。そこで,頻出史料をつぶやくbotを作ってみました。ただし,本格的な史料の学習ができるわけではないので,これだけで済まそうとは思わないでください!

アカウント:@nihonshiryou (日本史史料問題の攻略bot)

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・空欄補充などの問題形式にはしていません。ただ,史料は何かを覚えるだけです。
・解説には,出典や史料内容の説明,ポイントとなる語句の内容などをあげているので,できれば覚えてください。
・ときどき,【出典紹介】をつぶやきます。入試でも頻出の出典なので覚えてください。
・その他,日本史学習についてのつぶやきがときどき入ります(手動)。
・以下のものが30分ごとに流れます。
(例)
【古代01】夫れ楽浪海中に倭人有り。分れて百余国と為る。歳時を以て来り献見すと云ふ。

【古代01解説】[B★]出典=『漢書』地理志。紀元前1世紀ごろの日本の様子。「楽浪」は漢が朝鮮半島に設置した楽浪郡のことで,現在のピョンヤン(平壌)付近。

※注意!…この「botで史料問題は完璧に!」と考えて作成していません。「何時代の何の史料か」がすぐ分かるようになるための「反復練習」程度にしかなりません。
※誤植等を発見したら連絡ください。できるだけ素早く対応します。

【[ ]内の記号について】
 A~Dはここ5年の全国の入試の出題頻度を示しています。A・Bは毎年,どこかの大学で使用されています。Cは毎年は出題されていません。Dはここ5年での出題はありません。ただ,一つの目安でしかないので,いずれも重要史料だと考えてください。★は山川出版社『詳説日本史』(教科書)に掲載されている史料です。教科書掲載史料は全体的に頻出史料となります。

【史料問題の攻略について】
 基本的に教科書にも掲載されているような「頻出史料」は見た瞬間に「何の史料か」というのを判断する必要があります。さらに下線部の意味や空欄補充なども,受験生が知っているのを前提に出題されていると思われます。つまり,「頻出史料」は事前に学習しておかないと,その場で考えても解けない問題が多いのです。そこがその場での思考力や処理能力が問われる「初見史料」との違いです。
 「頻出史料」は事前に学習した上で過去問を解いて仕上げましょう。その延長線上に「初見史料の攻略」があります。「頻出史料」攻略できれば,「初見史料」の問題も処理できるようになります。
 まずは「頻出史料」の攻略から。できれば,数回声に出して読んでみましょう。眺めるだけでは頭に残りません! 
 さらに史料の問題を極めたい人は『日本史 史料問題集』(駿台文庫)をどうぞ!
 


 
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