大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2012年03月

深井雅海『綱吉と吉宗』(吉川弘文館)の感想

 Twitterでつぶやいた内容(2012.3.10)をまとめておきます。

【メモ】深井雅海『綱吉と吉宗』(吉川弘文館)読了。1.徳川綱吉から吉宗までの4代の将軍の時代を対象とする。綱吉から吉宗時代には「養子将軍」が藩主時代の家臣を幕臣に登用し,将軍主導の体制を構築する過程を江戸城御殿の構造に関連させて説明する。 (つづく)
posted at 11:51:37

2.綱吉から吉宗の時代には,側用人や御側御用取次を中核とする側近政治が行われた。家綱時代には老中合議制であったが,綱吉時代には将軍独裁体制の転換がはかられた。側用人は老中格であり,この時期の政治は将軍の意向を受けた側用人が「老中政治」を主導して進められた。(つづく)
posted at 11:51:49

3.吉宗時代には側用人を廃止し,代わりに旗本の側衆から御用取次を新設した。これにより格式が下がったことで,老中・若年寄のみならず,旗本役の実務吏僚にも接触できるようになった。そのため,「老中政治」は形骸化し,将軍主導での政治改革が迅速に進められた。(つづく)
posted at 11:53:38

4.この時期,幕府は,鉱山からの収入が大幅に減少したことにより,財政不足を生じていた。そのため,幕府は収入を年貢に頼らざるを得なくなり,綱吉以降,農政を中心とする改革や建て直しが重要な課題となった。(つづく)
posted at 11:53:56

5.そのため,綱吉・家宣・吉宗は,年貢徴収や財政運営を行う勘定所の役人として,側用人などとともに,強い主従関係のある藩主時代の家臣を多く登用した。特に吉宗の財政再建がある程度成功したのは,こうした勘定所役人の功績が大きかったといえる。(つづく)
posted at 11:54:19

[補足]農政については,綱吉時代の代官粛清,吉宗時代の勘定所改革と代官所の改革など,年貢増徴策につながるので,家綱以降についても意識しておきたいところです。また,元禄金銀以降の貨幣政策も,享保改革までつなげて理解しておかなければいけないと思いました。

6.以上は一部であるが,深井氏は「享保期のみならず,「悪政」とされる元禄時代にも,「改革」や建て直しが行われていたとする見方に立つ(p1)」としており,これは納得できる。各将軍の時代を別個にみるのではなく,どのようにつないで授業を組み立てるかのヒントになった。(終)
posted at 11:54:30

 もう少し,綱吉から吉宗までの個別の政策についての内容が欲しいという気がしましたが,「五 江戸城御殿の構造と殿中儀礼」の部分にも,授業の参考にできる内容が盛りだくさんだったので,十分,満足できました。
 この本を読んでの最大の収穫は,「綱吉時代」から「吉宗時代」をどうつなぐかのヒントを得られたことです。今後の授業の組み立てを考えるのが楽しみになってきました。
 これも,Twitterでつぶやきましたが,深井氏には『江戸城-本丸御殿と幕府政治』(中公新書)というのもあり,江戸時代の政治を理解する役に立ちました。

本郷和人『謎とき平清盛』(文春新書)の感想

 以前,Twitterでつぶやいた内容(2012.2.25)をまとめておきます。本郷和人氏の著書は,『人物を読む 日本中世史』(講談社選書メチエ)以来,いろいろ読んでおりまして,いつも,授業の説明で使える内容が盛りだくさんで,助かっております

 以下,つぶやいた内容です。

【メモ】本郷和人『謎とき平清盛』(文春新書)読了。1.大河ドラマ『平清盛』で主要な人物となる平清盛,源義朝,信西などを中心に人物史的な記述を軸に当時の貴族や武士のあり方を説明しており,具体的な人物をイメージしながらわかりにくい抽象的な概念を理解できる。(つづく)
posted at 21:09:47

2.本郷氏の『人物を読む 日本中世史』(講談社選書メチエ)と同様(同じネタもあったが…),受験生にそのまま話してもいいようなエピソード(ネタ話)も盛りだくさんであった。いつもながら,一般向けにわかりやすく研究史の整理をしているので,中世史の理解を進めるのに役立つ。(つづく)
posted at 21:09:59

3.気になった点が2つ。中世社会は「「当知行」が優先される。「実力主義」と「現状重視」が幅をきかせる(p227)」というのは非常に納得できるが,「頼朝の隆盛は,義朝の活動を基盤としている(p217)」はどうか。(つづく)
posted at 21:10:30

4.「実力主義」「現状重視」なら「頼朝の父義朝の配下にあった武士団が頼朝の挙兵を待ちつづけていたとは考えられず,国内での地位や地域社会における現実的利害にかかわって,頼朝の挙兵に参加した」という川合氏の見解のほうが納得できる。(つづく)
posted at 21:10:58

参考 川合康『源平合戦の虚像を剥ぐ』(講談社学術文庫)
    川合康『源平の内乱と公武政権』(吉川弘文館) 

5.「平清盛という武門の棟梁が,政治・政局の帰趨に決定的な役割を果たした。…「武家」が「公家」の役割を奪取していく。…「武家」が積極的に「公家」の領域に踏み込んでいくことを,「公家」の側が容認し,望んですらいる。これはまさに「権門体制の自壊」と評価するべき(p186)」(つづく)
posted at 21:11:18

6.確かに本郷氏のいう福原幕府は政治も軍事も担当したかもしれないが,高橋昌明氏の言うように平家が公卿になっても,有力貴族にとって必須の重要儀式を主催する能力を持たなかったのであれば,諸権門が職能を分担し,国家に貢献する「権門体制が自壊した」とは言えないのではないか。
posted at 21:11:36

参考 高橋昌明『平家の群像』(岩波新書)
    高橋昌明『平清盛 福原の夢』(講談社選書メチエ)

 特に今回の著書は,大河ドラマのガイドブックとして,読むといい本なのでしょう。平清盛,源義朝,藤原通憲と,ドラマでも重要な役となるであろう人物たちの知識や,朝廷の官職などがわかりやすく,説明されています。
 個人的に今回の大河ドラマ『平清盛』は,最近の『竜馬伝』や『江』などよりも面白いのですが,視聴率が下がっていくのは,一般の人にはわかりにくいからですかね。中世史は,受験生にも理解しにくいところのようですから…。
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