大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2012年02月

2012年 名古屋大学(文・情文) 日本史 講評

 名古屋大学については,解答速報を担当した上に,「青い本」も書くので,感想程度の簡単なコメントだけということで。(問題はこちら)

 今年度は大きな変更がありました。例年は,問題Ⅰ古代・中世,問題Ⅱ中世・近世,問題Ⅲ近現代(年度によって多少違う)という構成だったのですが,今年度は,問題Ⅰ・Ⅱの大問2題の構成で,それぞれ原始・古代~近現代のテーマ史となっていました。次年度も,大問2題の構成が続くかどうかはわかりません。難易度は例年並みでした。

問題Ⅰ 古代~近代の自然災害
 今年度は,多くの大学で出題されている自然災害などをテーマとするリード文からの出題です。テーマはあまり,読んだことのないような内容だと思いますが,設問は教科書のレベルで解答できる基本的なものが中心です。

問1.古代。御霊会について。
問2.中世。祇園祭の再興について。
問3.古代。早良親王が粛清された事件について。
問4.中世。平頼綱の台頭と没落。
問5.中世。永仁の徳政令について。
問6.近世。寛永の大飢饉後と天明・天保の大飢饉後の幕府の対策の違いについて。
問7.近代。日清戦後の軍備拡張政策について。

基本的には,教科書の内容ですべて解答できます。ただ,問6が受験生にとっては難しかったのではないでしょうか。問4は史料から平頼綱が討伐されたことがわかれば解答できるでしょう。問7はグラフ内のアイが軍事費であることさえ推測できれば基本事項でしょう。

問題Ⅱ 原始~現代の人々の移動と定住
 出題が古代と近代に偏っているので,出題者が2人というのが想像できます(笑)テーマは聞き慣れないと思いますが,こちらも,問題Ⅰと同様,出題の多くは教科書の内容で十分解答できます。

問1.原始。縄文時代に定住化が進んだ理由。
問2.古代。律令国家の国家的な事情による人々の移動のあり方。
問3.古代。律令国家の浮浪人対策について。
問4.近代。士族授産が行われた歴史的経緯。
問5.近世・近代。江戸時代初期から明治初期のアイヌ政策。
問6.近代。産業革命期の繊維産業に従事する労働者。
問7.近代。昭和恐慌期の農村復興策。
問8.現代。太平洋戦後のインフレ解消の政策。
問9.空欄補充問題。開拓使・蝦夷地・屯田兵・札幌農学校。
 
 問3は史料から浮浪人対策の内容を読み取ることができればいいでしょう。問題Ⅰ・Ⅱを含めて,史料や図版の読解問題が減りました。何問かは出題されていますが,読み取るほどではないです。昨年度は面白い問題が多かったのですが…。次年度の出題に期待しましょう!
 ちなみに2011年度の名大実戦の問題Ⅲで,地租改正について,紡績業と貿易の関係,世界恐慌の農村への影響,高橋蔵相の貨幣政策,金融緊急措置令・傾斜生産方式の空欄補充を出題したのですが,微妙にずれたんですよね…金融緊急措置令と傾斜生産方式の空欄補充は,「問8で的中!」って言っていいですか?(笑)

2012年 一橋大学 日本史 解答例

 とりあえず,一橋大学の解答例のみ,出します。(問題はこちら)
 ※Twitterでの議論を踏まえて一部修正しました。


1都城には,天皇をはじめ貴族・官人や京戸が居住し,公民の負担する調庸を財源に官吏には布などが現物で支給された。
2中世には,貴族以外にも新たな支配者層となった武士や,大寺社・天皇家などに属して経済活動を行う商工業者が増加した。室町時代には,富裕な商工業者である町衆が成長し,町を単位に自治を行った。
3博多は中国などの対外貿易,堺は瀬戸内海航路の拠点であり,室町時代には,勘合貿易で繁栄した。しかし,江戸時代になり,鎖国後,博多は長崎,堺は大坂に地位を奪われ,貿易都市としては衰退した。
4幕府の所在地であり,参勤する大名や,旗本・御家人の屋敷が集中し,その家臣や武家奉公人も含め,多くの武士が居住し,町人地にはさまざまな種類の商人や職人が居住した。明暦の大火後にはさらに市街地が拡大された。
5城下町には兵農分離により武士が集住する一方,免税特権を与えられた商工業者も定着し,藩の政治・経済の中心となった。
(全部で400字)



1大阪紡績会社が安価な輸入の棉花を使用して綿糸の大規模生産に成功すると,1880年代後半には同様に輸入の棉花を利用した大規模紡績会社の設立ブームが起こり,国産棉花の需要が減った。
2生糸は第一次世界大戦による戦争景気であったアメリカ向け輸出が増大した。綿糸は第一次世界大戦を背景に一時綿製品の輸出が伸びたが,大戦景気による労働者の賃金の上昇や中国の関税引き上げなどで輸出競争力が低下したことにより,綿織物や綿糸の輸出が減少した。
3犬養毅内閣が金輸出再禁止を実施したため,円為替相場は大幅に下落し,それ以前の産業合理化政策と合わせて,綿織物の輸出が増大したため,材料となる綿糸の生産も増大した。これに反発したイギリスは,輸出を伸ばした日本の低賃金政策を非難し,ブロック経済圏を形成して対抗した。
4恐慌で消費が縮小したアメリカ向けの生糸輸出が激減し,恐慌を契機に生糸に代わる安価な人絹糸の需要が拡大していった。
(全部で400字)



1統帥権。陸海軍の作戦や用兵などの統帥は天皇に直属しており,軍令機関の輔弼により運用され,内閣からも独立した権限とされた。緊急勅令の発令権。緊急の必要により,帝国議会閉会の場合に天皇は国務大臣の輔弼により,法律に代わる命令を発令することができた。
2幣原内閣のもと,憲法問題調査委員会が改正試案を作成したが,その内容がいぜんとして天皇の統治権を認める保守的なものであった。またアメリカ主導での憲法改正を狙っていたため,極東委員会の活動が始まる前の憲法改正をめざした。
3民間でも憲法草案が作成されていたが,その中で高野岩三郎ら憲法研究会の主権在民の原則をとった「憲法草案要綱」がGHQ案を作成する際に参照された。
4民法。戸主の家族員に対する支配権は否定され,男女同権の新しい家族制度を定め,婚姻や家族関係で男性優位の諸規定は廃止された。刑法。皇室に関する不敬罪や女性差別につながる姦通罪などが廃止された。
(全部で400字)


 解説は他の仕事との兼ね合いで,当分出せないと思います…
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