大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2011年09月

松方冬子『オランダ風説書』(中公新書)の感想

 今回は,タイトルに魅かれて買ってみた本です。授業ではそんなに大きく扱うことがないので,オランダ風説書だけで新書一冊とは,どんな内容だろうと。ずいぶん前に購入してましたが,やっと読みました。
 内容としては,オランダ風説書を通して,江戸幕府の対外政策やその意図,オランダ側の意図などを明らかにし,アジアのみならず,ヨーロッパまでを視野に入れて江戸時代の対外関係の推移をまとめたものです。

 オランダ風説書は,「鎖国」体制が確立するころから「開国」するころまで約200年にわたって,続きます(アヘン戦争後は別段風説書も)が,江戸幕府にとっては,唯一ともいえるヨーロッパ情報でした。その内容を大きく見ればカトリックから「西洋近代(幕府にとってはヨーロッパ諸国が起こしつつあるよくわからない何か:著者)」へと動いており,それは幕府の対外的関心を反映してもいたし,日本貿易を独占したいオランダ人にとっての競争相手の変化を表してもいました。つまり,オランダ風説書を通して江戸幕府の対外政策や,オランダの意図の時期による変化までがわかるとともに,それに影響を与える東アジアのみならず,欧米の動向もよくわかるのです。 
 松方氏が結びで「江戸時代の日本は完全に孤立していたわけではなく,世界史の文脈の中に確実に位置づいていた。このことはすでに多くの論者が指摘していることでもあるし,本書からも明らかであろう。幕府は「外」の存在を認識した上で,人や物,情報の動きに厳しい制限を加えた。だからこそ,「外」の状況を知るために風説書が必要とされた。(p202)」と書いているように,オランダ風説書を分析したこの本で,苦手としていた「世界史的視野」を広げることができそうです。
 それとは,別に興味深かったのが,オランダ風説書が,オランダ商館長や船長が口頭で伝えた内容をオランダ通詞が書き取り,長崎奉行の意向を受けてまとめたものだということです。オランダ語で提出された原本をオランダ通詞が翻訳したものだと思っていた(ちなみに別段風説書は蘭語の原本が提出される)ので驚きました。江戸幕府に報告された内容は,オランダ通詞や長崎奉行により,かなり恣意的に取捨選択されたものだったようです。

 さて,この本の内容を今後の授業にどう反映させていこうか悩むところです。

センター日本史B 本試験 難問集(2010~2006) ~中世編 その2~

 前回の続きです。問題や解答・解説は「データ集」にあります。

(5) 2008年 本試験 第3問 問4  16 空欄補充問題

 この設問は,空欄ウで間違えた受験生が多かったようです。室町幕府が朝廷の行政権を吸収して,諸国に段銭を賦課するようになるというのは,教科書にもある知識だと思いますが,この問題は,守護が各国で独自に賦課した「守護段銭」のことを問うているという意味で受験生には難問だったのでしょうか。『問題作成部会の見解』では,「室町時代の守護制度にかかわる教科書レベルの基本事項を問うもの」といっており,僕も同感ではありますが…。結局は,一問一答的に「室町幕府の財政の一つで,段別に土地に賦課された税」とだけ,覚えているとこのような設問は出来ないのがわかります。また,分一銭も教科書によっては書かれていないので,知らなかった受験生も多かったのでしょう。

(6) 2006年 本試験 第3問 問6  18 地図と文章の組合せ問題

 この問題については,2011年にも類題があり,以前の記事(センター日本史B 本試験 ~設問分析 その3~)でも,分析しているので参照してください。とにかく,普段から地名や地図は丁寧に確認しておくことが必要です。

(7) 2007年 本試験 第3問 問5  17 語句の組合せ問題

 この問題は,問題作成部会も,「正答率は3割に満たなかった」としており,さらに「相当に教科書を読み込んでいる必要があろう」との見解を示しています。しかし,妙心寺でなく,大徳寺にすれば,もう少し正答率は上がったでしょう。受験生の勉強不足のようなニュアンスですが,教科書の読み方の問題ではなく,個人的には出題した方が悪いと思っています。

(8) 2008年 本試験 第3問 問6  18 語句の組合せ問題

 正直にコメントすると,「センター試験もいい問題ばかりではない」といったところでしょうか。こうした歴史用語の知識問題になると,良問とは言えないだけに『問題作成部会の見解』が特に気になります。作成部会は「。著名な戦国大名の基本的な特徴を理解していれば解答は難しくないと考えたが,こうした形で戦国大名の特徴を整理する機会が少ないためか,正答率は5割に達しなかった」としており,わかってるじゃないですか(笑)出題者側も,よくない問題だったと認めているようです。ただ,主要な戦国大名の出自や城下町,分国法は知識として知っておくべきだと思います。戦国大名の学習をしなくていいという意味ではないので,誤解しないでください。

以上,中世編でした。
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