大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2011年05月

河内祥輔・新田一郎著『天皇と中世の武家』(天皇の歴史04)の感想

第1部 鎌倉幕府と天皇 河内祥輔
 時期としては,院政期から鎌倉幕府滅亡までを扱っています。
 河内氏は,平安時代以降,天皇と摂関が協調し,貴族全体がそれを支持する,という形こそが朝廷にあるべき姿とみなされ,「正統」の天皇が立つときに朝廷は秩序が安定するというのですが,院政期から鎌倉時代にも同じことが言えるのか?と思うと納得はできませんでした。「正統」の天皇が立って朝廷が安定したというのは結果論ではないのかなあ…。

第2部 「古典」としての天皇 新田一郎
 時期としては,建武の新政から応仁の乱後までを扱っています。
 新田氏の文章はむずかしいのですが,室町時代の公家と武家の関係の推移がわかったような気がします。室町時代の天皇・公家は授業ではほとんど扱うことがないので,考えるいい機会になりました。特に足利義満政権において、単純に武士達が公家政権に優位にたち、支配したということではなく、武士を従える義満が、公家政権の頂点に立ち、公家社会の方法で武士達の持つ武力を組織化したというのは,あまりイメージになかったので今後の参考にしたいと思います。
 第2部は面白かったですね。

佐々木恵介著『天皇と摂政・関白』(天皇の歴史03)の感想

 対象としているのは,藤原良房・基経の摂関政治成立期から道長・頼通の全盛期までです。
 摂政・関白の変遷を,太政大臣の「職務」としてはじまり,延喜・天暦の治以降,独立した「官職」となっていくという展開で説明しており,わかりやすいものでした。その他,天皇と蔵人所や検非違使など令外官の関係,摂政・関白の政務などは,教科書の説明を補える内容であったと思います。
 さらに佐々木氏には,山川出版社の日本史リブレットでも,『受領と地方社会』というのがありますが,今回の著書でも受領の富の集中や摂関家など上級貴族への私的奉仕についてはコンパクトにまとまっていて,参考になりました。
 気になった点は,藤原道長が摂政を辞した後も権力を握っていたことについての説明で,「その力の根拠は天皇・東宮の外祖父であり、かつ摂関の父であるところ。これは一家の家長が国政の頂点に立つという院政の一つの源流となった。」という部分です。他でアドバイスもいただきましたが,上島享氏も同様の議論をしているそうなのでまた,読んでみたいと思います。

 摂関政治期の受領と上級貴族の関係については,近年でも,2010年東大(摂関政治期の貴族社会),2009年京大(国司制の変容)など出題されているので,今回の本は参考になりました。
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