大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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佐々木恵介著『天皇と摂政・関白』(天皇の歴史03)の感想

 対象としているのは,藤原良房・基経の摂関政治成立期から道長・頼通の全盛期までです。
 摂政・関白の変遷を,太政大臣の「職務」としてはじまり,延喜・天暦の治以降,独立した「官職」となっていくという展開で説明しており,わかりやすいものでした。その他,天皇と蔵人所や検非違使など令外官の関係,摂政・関白の政務などは,教科書の説明を補える内容であったと思います。
 さらに佐々木氏には,山川出版社の日本史リブレットでも,『受領と地方社会』というのがありますが,今回の著書でも受領の富の集中や摂関家など上級貴族への私的奉仕についてはコンパクトにまとまっていて,参考になりました。
 気になった点は,藤原道長が摂政を辞した後も権力を握っていたことについての説明で,「その力の根拠は天皇・東宮の外祖父であり、かつ摂関の父であるところ。これは一家の家長が国政の頂点に立つという院政の一つの源流となった。」という部分です。他でアドバイスもいただきましたが,上島享氏も同様の議論をしているそうなのでまた,読んでみたいと思います。

 摂関政治期の受領と上級貴族の関係については,近年でも,2010年東大(摂関政治期の貴族社会),2009年京大(国司制の変容)など出題されているので,今回の本は参考になりました。

吉川真司著 『聖武天皇と仏都平城京』(天皇の歴史02・講談社)の感想

 著者は京都大学の教授ですが,この本を読むにあたっては,受験で出るか?というスケベ心はあまりありませんでした。この前に,同じ著者の岩波新書のシリーズ日本古代史③『飛鳥の都』読んでおり,それが面白かったので読みました。また,『飛鳥の都』は主に7世紀の内容で,今回読んだ『聖武天皇と仏都平城京』は主に8~9世紀初までの内容だったので,続きが読めると思った事もあります。

 『飛鳥の都』は,7世紀の通史としては面白かったと思います。特に吉川氏は,天智朝を律令形成の画期とみており,近江令は単行法令ではなく,体系的な法典として制定され,官僚制と公民制が成立したという立場に立っています。評価はともかく,天智朝を理解する参考にはなりました。一方でわかりにくいのは壬申の乱の評価です。単に天武天皇が皇位を簒奪したということで片づけていいのでしょうか?ただ,現状の教科書を考えると,天智朝に令が完成したという授業はしにくいですね。

 『聖武天皇と仏都平城京』は,8世紀の政治の流れをざっと追うにはいいかもしれません。わかりやすかったのは,発掘調査の成果も含め,平城宮の構造と天皇のあり方(もう少し細かく知りたかった気もするが)についての内容です。教科書では,ほとんど記述されていない部分なので,授業を組み立てる上での参考になりました。教科書だと天皇は何もしていないみたいですから(笑)。ただ,太上天皇のあり方については,今までの僕の理解と違い,よくわからない部分がありました。
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