大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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吉川真司著 『聖武天皇と仏都平城京』(天皇の歴史02・講談社)の感想

 著者は京都大学の教授ですが,この本を読むにあたっては,受験で出るか?というスケベ心はあまりありませんでした。この前に,同じ著者の岩波新書のシリーズ日本古代史③『飛鳥の都』読んでおり,それが面白かったので読みました。また,『飛鳥の都』は主に7世紀の内容で,今回読んだ『聖武天皇と仏都平城京』は主に8~9世紀初までの内容だったので,続きが読めると思った事もあります。

 『飛鳥の都』は,7世紀の通史としては面白かったと思います。特に吉川氏は,天智朝を律令形成の画期とみており,近江令は単行法令ではなく,体系的な法典として制定され,官僚制と公民制が成立したという立場に立っています。評価はともかく,天智朝を理解する参考にはなりました。一方でわかりにくいのは壬申の乱の評価です。単に天武天皇が皇位を簒奪したということで片づけていいのでしょうか?ただ,現状の教科書を考えると,天智朝に令が完成したという授業はしにくいですね。

 『聖武天皇と仏都平城京』は,8世紀の政治の流れをざっと追うにはいいかもしれません。わかりやすかったのは,発掘調査の成果も含め,平城宮の構造と天皇のあり方(もう少し細かく知りたかった気もするが)についての内容です。教科書では,ほとんど記述されていない部分なので,授業を組み立てる上での参考になりました。教科書だと天皇は何もしていないみたいですから(笑)。ただ,太上天皇のあり方については,今までの僕の理解と違い,よくわからない部分がありました。

大津透著『神話から歴史へ』(天皇の歴史01・講談社)の感想

執筆者は現在,東京大学教授で,当然,東大の入試問題の出題も担当しているでしょう。
以前読んだ『道長と宮廷社会』(日本の歴史06・講談社),『日本古代史を学ぶ』(岩波書店)などは,面白かったし,東大の入試でも近年扱われた問題を考える参考になったので,今回の著書も読んでみました。時代としては,邪馬台国連合の成立~7世紀の中ごろ(天智朝まで)です。しかし,結論からいうと,6世紀ごろまでの記述は研究史の整理のような感じで,7世紀以降の記述も以前の著書と大きく内容が変わるものではなかったと思います。

 全体的な内容としては,受験生相手に講義をするときに気になる氏姓制度,推古朝・遣隋使,白村江の戦い,天智朝,天武・持統朝など,教科書記述の背景を知るために参考になりました。実際に大津氏は山川出版社の『新日本史』の執筆者だし…。

 東大の過去問に関連する内容は以下の通りです。
・「東人は常に云はく,『額には箭は立つとも背には箭は立たじ』…」「日本古代の反乱の特色は,必ず東国へ脱出して東国の勢力を味方につけようとすることである。」p227
2008年の東大・第1問の出題内容です。
・「斉明・天智朝の遣唐使は、かつてない緊張感の中で、倭国の存続をかけての政治的交渉の任を負ったのである。」p318
2009年の東大・第1問の出題内容に関連する部分です。まあ,前掲の『日本古代史を学ぶ』のほうがど真ん中の内容ですが(笑)
しかし,2008年と2009年は2年連続で大津氏が出題しているのでしょうか?わかりませんが…。



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