大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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下坂守『京を支配する山法師たち』(吉川弘文館)の感想

 中世の本を立て続けに読んでおります。早島氏の『室町幕府論』から延暦寺と幕府の関係が気になり,Twitterで教えてもらったこの本を読んでみました。タイトル通り,鎌倉時代から戦国時代までの延暦寺を中心とした内容で,知らなかったことの方が多く非常に興味深い内容でした。とにかく,延暦寺は朝廷のみならず,幕府に対しても強かった!

 まず,延暦寺衆徒の支配下にあった坂本の商人は,京の経済に対して非常に大きな影響力を持っていたようです。次に入試でも,頻出の土倉・酒屋役について。教科書や入試では,朝廷の権限を室町幕府が吸収して,京の市政権を握った幕府が高利貸業者である土倉酒屋に課税したという程度の説明しかありません。しかし,現実は京の土倉・酒屋の多くは,延暦寺の衆徒の支配下にあり,幕府は衆徒との協調なく,土倉・酒屋役は徴収できなかったということです。こうした延暦寺の衆徒の京に対する支配の強さがわかっただけでも面白い内容でした。ちょっと,授業では使えない内容かもしれませんが。
 もう一つ,面白かったのは,神輿振りの話です。教科書にも,延暦寺の僧兵が強訴の際に日吉神社の神輿を担ぎ出したことは書いてあります。実際に神輿を担いでいたのは坂本の在地人(住人)で,坂本の日吉神社からいったん,比叡山上まであげられ,そこから雲母坂を下って朝廷へと動座したそうです。いったん山上に上がるとはおもしろいですね。

 中世の寺社については,教科書でも触れられているところではありますが,なかなか具体的にイメージしにくいところですが,この本でかなり参考になりました。

本郷恵子『将軍権力の発見』(講談社選書メチエ)の感想

 今回は早島大祐『室町幕府論』を読んだので,続けて同時代のものを読もうと思いました。対象の時期は鎌倉時代から足利義満の時代ですが,中心は室町幕府です。本郷恵子氏の『京・鎌倉 ふたつの王権』(小学館 日本の歴史6)も以前読んでいましたが,なぜか内容が記憶に残っていません…。
 早島氏は,財政史の面から室町幕府を論じていましたが,本郷氏は鎌倉幕府と対比しつつ,室町幕府の将軍権力について論じていました。鎌倉幕府が将軍を形骸化して法や合議による公正な政治をめざしたのに対し、室町幕府では、義満の権力伸長により守護大名権力の上位に立つ将軍権力が確立して、地域と中央政権との均衡・全国レベルの統制を保つ核になったとしています。

 そのなかで,気になっていたのは,昨年度の某模擬試験で室町幕府と鎌倉府の関係について説明させる論述問題を作成したこともあり,室町幕府による全国支配です。2011年東大の入試第2問も,足利義持期に注目しつつ,守護大名を通じた室町幕府の全国支配に着目した問題でした(本郷恵子氏が出題者かどうかはわからないが)。
 室町幕府に対する鎌倉府の自立性については,足利基氏が鎌倉公方になって以降進み,幕府にとって鎌倉府との関係は外交であり、幕府の鎌倉府に対する優位性は官符・官宣旨を出せることで確保し、全国政権としての演出をしていたとしています。本郷氏は,幕府の全国支配について,禅宗による宗教面での補完と官符・官宣旨の利用を強調しているのですが,各地域の調整という側面だけで幕府の全国支配は成り立つのだろうかという疑問が残りました。残念だったのが,義満時代の記述で終わっていたことで,近年注目されている(らしい)義持時代に触れられていなかったことです。

 読みながら,ご主人の本郷和人氏の影がちらちらしたのは気のせいだろうか(笑)。個人的には,本郷和人氏のファンで,著書はほとんど読んでおります。というのは,授業の説明で使える話が満載だからで,おすすめは『人物を読む 日本中世史』(講談社選書メチエ)です。中世は授業で説明しにくい項目が多く,苦労しますが,本郷和人氏の著書は本当にありがたいです。
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