大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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早島大祐『室町幕府論』(講談社選書メチエ)の感想

 『天皇と中世の武家』(天皇の歴史04)の新田一郎氏の室町時代の部分が気になっていたので,すでに購入済みで読めていなかったこの本を手に取ってみました。内容は足利尊氏による幕府成立から4代将軍の足利義持までです。
 室町幕府について財政史的観点から見るという今までの自分には無かった観点から論じられており,非常に興味深く読めました。特に注目した点は2つあります。高校教科書では常識的に書かれている室町幕府による朝廷の京都市政権吸収について否定していること,もう一つは近年注目されているようですが,足利義持時代の評価です。
 京都市政権の問題については,現状の教科書を考えると,そのまま授業では使えませんが,その過程で出てきた土倉酒屋役の説明が非常にわかりやすく,当時,京都を中心とする経済がどのように発展していたのかが理解できました。
 また,足利義持時代については,従来,足利義満の時代が室町幕府の支配体制の確立期と考えられていたと思いますが,公武の支配が制度的に確立・安定するのは足利義持の時代だと。これは今年度(2011年)の東京大学の第2問の「…室町幕府が最も安定していた4代将軍足利義持の時期(1422年)における,鎌倉府の管轄および九州をのぞいた諸国の守護について,…」という設問文が思い出されました。研究で素人の予備校講師としては,近年,研究者が注目していることがわかっただけでもよかったと思います。これも,教科書の扱いを見ると授業では直接的に使えるネタではありませんが…。
 その他,社会・経済や文化・外交の側面でも,教科書の理解につながり,授業の参考になるような話題が盛りだくさんで,参考になるところが多かったように思います。
 僕としては満足感の高い本でした。
 

細川重男『鎌倉幕府の滅亡』の感想

 だいぶ前に購入していたのですが,天皇の歴史04を読み,鎌倉時代が気になってきたので読みました。対象としているのは,鎌倉幕府成立から鎌倉幕府滅亡までです。
 とにかく,御家人制(武士団の構造含む),鎌倉幕府の職制,訴訟制度,得宗専制とその展開については,非常にすっきりしました。教科書の内容がわかりにくいところだけに,理解の助けになるような,あるいは講義の組み立ての参考になりそうな話題がたくさんありました。特に興味深かったのは,鎌倉幕府の支配階層の家々についての整理です。これこそ,教科書では書かれていないことなので,役に立ちそうな内容でした。
 しかし,主題である鎌倉幕府滅亡の原因として,鎌倉に居住する幕府内の特権階級(「武家の貴族」と定義)が,実態に即した対応である地方分権体制に移行せず,中央集権体制を維持することにこだわったことがあげられており,これは初めて聞いた視点です。とはいっても,結局授業では,社会の変化,後醍醐天皇の個性,幕府支配層に対する武士の不満と鎌倉幕府滅亡となるのでしょうか…。
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