大学受験の日本史を考える

大学受験予備校で日本史講師をしている鈴木和裕です! 大学受験の日本史について思いつくままに書いていきます!

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2017年 センター日本史B本試験の分析 その2

 前回の続きです。

◆第2問 問1 問題番号7
 …6世紀末には[ ア ]氏が飛鳥寺(法興寺)を建立し,…。…仏教が地方社会に浸透していくうえでの一つの拠点となったのは,律令制下で[ イ ]として地方行政を担うことになる地方豪族が建てた寺院であった。
空欄[ ア ][ イ ]に入る語句の組合せとして正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ア 大 伴   イ 国 司
② ア 大 伴   イ 郡 司
③ ア 蘇 我   イ 国 司
❹ ア 蘇 我   イ 郡 司

 この問題は半分強の受験生しかできませんでした。「なぜ?」と驚きませんか。さらに誤答は③に偏っていて,半分弱ぐらいの受験生が選択しています。国司と郡司で間違っているのです。知識がなかったのではなく,リード文を読めていないのではないかと推測しています。ヒントは問題番号1と同様,空欄の後に「地方行政を担うことになる地方豪族」とあります。もしリード文の読み損ないであるなら,しっかりリード文を読もう!としか言えませんが。


◆第2問 問4 問題番号10
 下線部(c)に関して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
 Ⅰ 造都を主導していた藤原種継が暗殺され,早良親王が首謀者として処罰された。
 Ⅱ 三筆の一人として知られる橘逸勢が,謀反を企てたとして流罪となった。
 Ⅲ 政権を批判して九州で反乱を起こした藤原広嗣が敗死した。
   ① Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ   ② Ⅰ-Ⅲ-Ⅱ   ③ Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ
   ④ Ⅱ-Ⅲ-Ⅰ   ❺ Ⅲ-Ⅰ-Ⅱ   ⑥ Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ

 半分以下の受験生しかできていませんでした。年代順配列だから…と言いたいところですが,文章を見ると,Ⅰは藤原種継暗殺事件,Ⅲは藤原広嗣の乱と人物名がそのまま事件名になります。Ⅱは橘逸勢から承和の変を想起しなければならず,少しハードルが上がりますが,いずれも基本的な事件に関する問題にもかかわらず正答率が低かったといえます。ちなみに正答率データを見ると,Ⅱよりも,ⅠとⅢで迷った受験生が多かったようです。
 以下の問題の正答率が60%未満であったことを考えると,政治史だからといってバカにできないのがわかります。

【参考】2016年 問題番号9 
  下線部(b)[藤原氏の氏長者]に関連して,平安時代の藤原氏について述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ
  ① 冬嗣は桓武天皇から蔵人頭に任じられ,のちの摂関家の基礎を築いた。
  ❷ 良房は他氏を退けるとともに,臣下ではじめて摂政の任についた。
  ③ 忠平は醍醐・村上両天皇の摂政・関白となって実権を握った。
  ④ 頼長は源義朝と結んで平治の乱を起こしたが,平氏に討たれた。


◆第2問 問6 問題番号12
 下線部(e)に関連して,9・10世紀の地方支配に関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
 X 9世紀前半には,大宰府管内に公営田が設置され,直営方式による財源の確保がはかられた。
 Y 10世紀前半には,荘園整理令が発布され,記録荘園券契所(記録所)が設置された。
   ① X 正  Y 正   ❷ X 正  Y 誤
   ③ X 誤  Y 正   ④ X 誤  Y 誤

 半分以下の受験生しかできていませんでした。受験生ができない,典型的なパターンの問題です。誤答は①に偏っていて,3分の1以上の受験生がYを正文と判断しています。まず,「記録荘園券契所(記録所)」から後三条天皇の延久の荘園整理令だと判断しなければいけません。そのうえで醍醐天皇の延喜の荘園整理令との区別が必要です。ここにハードルが一つあります。そのうえ,延久の荘園整理令が「11世紀後半」ということがわからないとできません。難問です。
 ちなみに以下の問題も,正答率5割を切った問題です。誤答として③を選んだ受験生が,なんと!約半数います!

【参考】2011年 問題番号11
問5 下線部(d)に関連して,9~10世紀ころの僧の動向について述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 空海は,唐に渡った経験はないものの,唐風の書の名手であった。
② 最澄の弟子円珍は,唐から帰国後,真言宗の密教化を進めた。
③ 9世紀初頭,鑑真が唐から渡来し,日本に戒律を伝えた。
❹ 10世紀半ば,空也が京で浄土教を説いた。

 日本史では歴史事項を時系列に整理していく必要があります。それは年代(西暦年)暗記をすることではなく,ある時代・時期にはどのような特徴があり,前後の時代・時期とはどのように変化したのかを理解することです。センター日本史のレベルではそこまでしなくていいと思っていますか?だからセンター日本史Bの年代順配列問題や時期判定の正誤問題ができないのですよ。時代区分・文化区分・世紀などの「時期区分」を意識して歴史事項を整理してください

2017年 センター日本史B本試験の分析 その1

 久しぶりに投稿します。
 2017年度のセンター日本史B本試験の難問分析です。僕の定義する「難問」は「正答率60%未満」の問題です。 何回かに分けて投稿します。センター日本史を攻略する参考にして下さい。
 問題は掲載していますが,参考として設問単位であげたので,そのままでは解けない問題もあるかもしれません。その際はリード文も含めた実際の本試験の問題を確認してください。

◆第1問 問1 問題番号1
…今朝,船は[ ア ]に寄港しました。…江戸時代初めにオランダやイギリスの商館がおかれた地として…。…高麗王朝がモンゴルに服属したあとも,抵抗を続けた[ イ ]の拠点となった島です。…

空欄[ ア ][ イ ]に入る語句の組合せとして正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ア 平 戸   イ 按 司
❷ ア 平 戸   イ 三別抄
③ ア 長 崎   イ 按 司
④ ア 長 崎   イ 三別抄

 この問題の正答率が低いことは問題を見てすぐにわかりました。正答率は3分の1程度でかなり低かった問題です。誤答も分散しており,まったくわかっていない受験生が多いことがわかります。[ア]については,「江戸時代初めにオランダやイギリスの商館がおかれた地」という明確なヒントがありますが,空欄の数行あとにヒントがあったことも,難しくしている理由の一つでしょう。例年,近世の対外関係,特にヨーロッパ諸国が出てくると,出来ない受験生が多いので注意が必要です。ただ,平戸は年代順配列問題ではありましたが,2016年の問題番号17で出題されています。[イ]の三別抄は山川出版社『詳説日本史』,実教出版『日本史B』ともに脚注にしか説明されていません。やや難易度の高い用語といえるでしょうか。


◆第1問 問2 問題番号2
下線部(a)に関連して,原始・古代から近世の瀬戸内地方について述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 縄文時代には,魚群を見張るために高地性集落がつくられた。
② 平安時代には,源経基が海賊らを率いて反乱を起こした。
❸ 室町時代には,主要な港で幕府や寺社などが津料を徴収した。
④ 江戸時代には,堤を築いて潮の干満を利用する揚浜の塩田が普及した。

 半分ぐらいの受験生しかできていません。③が正文ですが,誤文だと判断した受験生は「寺社」に引っかかったのでしょうか。室町幕府が関銭や津料を徴収していたことは教科書に書いてありますが,寺社については触れていません。誤答として3分の1ぐらいの受験生が④を選んでいます。文章は入浜塩田の説明です。2014年の問題番号20で「瀬戸内海沿岸を中心に,入浜式塩田(入浜塩田)が発達した。」という選択肢が正文で出題されています。過去問を解いた後の復習をしていれば間違う問題ではありません


◆第1問 問3 問題番号3
 下線部(b)に関して述べた次の文X・Yについて,その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
 X 留学生として隋に渡った高向玄理は,帰国後に国博士に任じられた。
 Y 中国から渡ってきた僧の隠元隆起(隠元)によって,日本に黄檗宗が伝えられた。
   ❶ X 正  Y 正   ② X 正  Y 誤
   ③ X 誤  Y 正   ④ X 誤  Y 誤

 この問題も半分弱ぐらいの受験生しかできていません。Yの隠元の知識がない受験生が多かったのかとも思いましたが,Xを誤文と判断している受験生も少なくなくありません。基礎的な用語しか出ていないので知識の確認が重要です。2文の正誤問題,特に解答が「X 正  Y 正」となる問題は難問のようです。高得点を取るためにはこのタイプの問題が解けないといけません。


◆第1問 問5 問題番号5 ※図版は省略
 下線部(c)に関連して,Tが見た次の写真Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
 Ⅰ 船で舞鶴へ到着した大陸からの復員軍人や引揚げ者たち
 Ⅱ 満州・内蒙古の開拓への参加を青少年に訴えるポスター
 Ⅲ 宣戦布告後,日本海航行に関して出された電報 ※(電報文の内容)に「露艦」とあり
   ① Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ   ② Ⅰ-Ⅲ-Ⅱ   ③ Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ
   ④ Ⅱ-Ⅲ-Ⅰ   ⑤ Ⅲ-Ⅰ-Ⅱ   ❻ Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ

 半分ぐらいの受験生しかできていませんでした。やはり年代順配列問題は差がつく問題です。正答率のデータを見ると,ⅠとⅡの順番で迷った受験生は少なかったようです。ただ,誤答で④を選んだ受験生が3分の1強です。Ⅲの図版中の史料の内容は活字になっており,「露艦」というのが見られるので,日露戦争中のことだと明らかなのですが,Ⅲの文章の「宣戦布告」を日中戦争やアジア太平洋戦争と読み違ったのでしょうか?

 今年は例年と違って,第1問のテーマ史に難問が多く,受験生も戸惑ったのではないでしょうか。今後は今まで以上に指導要領にある「時代ごとに区切らない主題を設定」した問題(問題番号2の瀬戸内地方,問題番号6の交通や通信)が出題されるので注意が必要です。テーマ史の学習をするのではなく,時期区分をしっかりして歴史用語を整理しておく必要があります。
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